サブプライムローン問題に端を発した金融危機は、社会全体ではまだまだ大きな影響を残していますが、幸いなことに私たちの属する半導体産業は、他の産業に比べて比較的早く回復しつつあります。スマートフォンやネットブックなどの新しいアプリケーションが市場を牽引し、昨年の1~3月を底として回復軌道に転じました。
米国、日本をはじめ、社会全体に変革を望む流れがより鮮明になっています。私たちも、社会の変化を注視しながら、半導体産業が経済を回復させる大きな牽引力になるという信念と気概をもって、事業の舵取りを進めていかなくてはなりません。
現在起こっている変化の大きな流れとして、世界経済は米国中心から多極化し、新興国を中心として拡大しています。これまでパソコンなどの電子機器を買うことのできなかった15億人にも及ぶ層が新たな購買層として出現し、電子機器市場の成長に大きく貢献するでしょう。新たな購買層の出現により、パソコンや携帯端末はより低価格化が求められます。また、情報・通信ネットワークが進化し、クラウドコンピューティングを中心にダイナミックに展開する構想が大きく動いています。さらに、IT技術を駆使した高効率給電システムであるスマートグリッドは、新しい社会インフラであり、今まさに形成されつつあります。これらを基として新しいアプリケーションが生まれてきており、我々の産業を次の成長へ押し上げる原動力となるでしょう。この流れに、我々は積極的に取り組んでいくことが大切です。
これまで何度も、半導体産業はピークを迎えたという見方がありましたが、シリコンサイクルの谷から回復する段階には、1990年代前半のパソコン然り、90年代後半から2000年にかけての携帯電話然り、常に新しい波が起き、過去のピークを超えてきました。今回も、前述しましたようにまさに今、我々の技術分野を生かすことができる新しい波が起きていると肌で感じています。新しい技術が新たな需要を創造していくのです。この次の成長につながる波をとらえて、さらなる飛躍を目指していきたいと思います。