車載用リレーをメインにしている当社にとってこの1年間で様相は大きく変わった。1年前の米国の経済変調は米国の自動車産業だけでなく、世界のあらゆる産業に大きな影響を与えたが、とりわけ、ものづくり関連は過剰な生産設備を抱えているところが多く、設備投資の停滞を招いている。当社も2009年2月頃は、ピーク時の40%を切るほどまで生産水準が低下し、在庫調整にも苦しんだ。ところが4月頃からV字とも言えるペースで受注が持ち直し、今ではピーク時の生産を上回る月産1500万個に達している。これは車の生産台数から考えても異常な数量で、まさにバブルの状況と言える。余りにも在庫調整をし過ぎた反動であるが、実際の需要はこの80~90%ぐらいと見ている。従って増産のための投資は行わないで、現状の設備と態勢をフル回転させながら生産を続ける方針である。
自動車の生産は在庫を持たないカンバン方式の典型と言われるが、最近は海外生産が増えて日本のカンバン方式の運用方法と異なる点も生まれ、実需とのギャップが生じる可能性が高くなっている。
このところの素材価格の高騰と円高傾向も大きな問題で、特に生産数量が増えることは素材の消費量も増え、コスト面からは必ずしも良いことばかりではない。
現在の車の需要増は、日本、中国、欧州の補助金政策による効果も大きく、自動車産業がこの先も明るいかというと、けっしてそうではないと思う。しかも、リレーメーカー同士の販売競争は依然激しく、今後は中国ローカルのリレーメーカーも参入してくるだろう。
今後、ハイブリッドカーや電気自動車など自動車の形態が変化してくる中で、リレーにも影響を与えるだろうが、それに呼応した新製品開発投資を継続して進めていく。