中部地区の経済活動の基盤を担っている自動車は、2010年1月中部経済産業局発表の管内総合経済動向によると、米国向けが堅調、新興国向けが順調であることや、国内向け低燃費車が好調であることから、増加傾向となっている。自動車部品は、国内完成車向け、国内メーカーの海外現地工場向けが堅調なほか、アジア向けが増加しており、全体でも増加傾向となっているという。しかし、ハイブリッド車などの低燃費車は、優遇税制対象ということもあって好調だが、それ以外の車種は苦戦が続いている。
設備投資関連を扱うFA商社にとって、中部地区に多くのメーカーが集中する工作機械の動向からは目を離せないが、09年11月の中部経済産業局管内金属工作機械メーカー主要8社の総受注高は、前年同月比24・8%減の139億円と17カ月連続で前年を下回っている。国内受注の内訳では、自動車工業向けが15億円と16カ月ぶりに前年を上回ったものの、一般機械工業向けは15カ月連続で前年を下回っている。海外もアジア向けが少し上向いているが、北米・ヨーロッパ向けは落ち込みが続いている。好景気の中国向け工作機械は好調のようだが、大型の機種はあまり出ず、小型の機械がよく売れている。
こうした環境の下、中部地区のFA商社にとって期待を寄せるのは、環境、安全、エコ関連などの伸長分野だが、太陽光パネル、監視モニターなどは制御という部分より、電子部品などの占めるウエイトが高く、即座にFA制御機器の売り上げ増に結びつくものでもないようだ。
肝心の自動車産業では、拡張路線に走り最高販売台数を記録した当時の過剰設備が大きな課題になっている。そのため新規の設備投資はなかなか見込めず、これら既存設備の更新ぐらいしか期待できない状況。ただ、昨年夏ごろから、工作機械の修理需要は増えてきているようだ。自動車メーカーなどの設備投資減の影響を直に被ったFA商社では、売り上げが半分ぐらいまで減少したところもあり、経費削減、人員整理、給与カットなどに手を付けざるを得ない状況だ。さすがにリストラは、景気が回復した時に人材不足に陥ったり、会社全体の士気にも関わったりすることから、それほど実施されていないようだが経費は切り詰めるだけ切り詰めている。事務所の賃貸料の安いところへの移転、宣伝・交通・交際費カット、徹底した備品管理などの節減策はよく見られる。
営業面では、単に顧客にカタログを持っていくだけでは売れないので、提案力を付けて、システムとして販売したり、顧客の要望に迅速かつ適切に応じたりする能力が営業に求められる。共同で商品の企画、開発などを行う動きも見られる。大手企業だけでなく、中堅、中小企業にまで幅広く営業攻勢をかけ、こまめに商品を売っていく必要もある。人材のレベルアップのためには各種研修を実施し、管理職は現場をよく知ることが大切で、変革の時代の中で売れる商品も変わってくるので、それを的確に捉えなければならない。
中部地区の企業は堅実経営で内部留保を保有していたところも多いが、それを取り崩しても業績が悪化したり、後継者がいなかったりするFA商社もあり、M&Aの動きや、FA機器メーカーとの提携、吸収合併もありうる。
いずれにしても、米国の景気回復、為替レート、政府の経済政策などの動向が、今後の商社の業績向上のカギを握っており、ここしばらくは原点に返って、コツコツと堅実な経営を行い、景気が戻るのを待つほかないようだ。