関東地区のFA・制御機器市場は、1年前の手の打ちようがないほどの状態から脱しており、受注も前年同月を超える水準まで回復してきた。まだ、受注先行で売り上げは一部に品不足の製品もあることなどから、通期としては前年度比70~80%ぐらいのところが多い。したがって、2期連続で減収となる商社がほとんどだ。しかし、各社とも損益分岐点を下げるために、ワークシェアリングや給与カット、拠点の縮小・統廃合、配送の方法の見直しなどで固定費を始めとした経費の削減を行っており、利益はトントンか若干のマイナスで抑える計画で取り組んでいる。
FA・制御機器市場は、大きなウエイトを占めていた自動車や半導体・FPD(フラット・パネル・ディスプレイ)製造装置、工作機械関連の需要が大きく落ち込んだ影響を受けて昨年春頃までは、在庫整理に伴い、この関連での売り上げがほとんどなかったところが多い。在庫整理は終わっても依然需要は低迷しており、昨年夏頃からFPDで少し動きが見られた程度である。
こうした中で、内需型分野へのアプローチを強め、新エネルギー関連の太陽光発電や風力発電、省エネニーズに応えたLED関連、自動車のハイブリッド化や電動化に対応した電池や充電施設関連にシフトし、売り上げ確保に取り組んでいる。
社内に、こうした市場に対応した部門を設けているところもあるが、技術サポートや成約まで時間がかかることなどから、社内のシステム部門やメーカーとタイアップした形で、ある程度中長期的な観点で市場開拓に取り組んでいる。
これらの市場は国内で対応できる部分が多いことから、商社としてもある程度じっくりと時間をかけて取り組んでも、市場空洞化のリスクは少ないという見込みもある。
メーカーやユーザーは海外市場開拓も視野に入れているが、商社は海外展開のできる力を持っているところは限られており、大半の商社は国内で市場を開拓するしか方法がないのが実状。仕入先メーカーも、海外市場開拓に向けたパワーが必要なことから、国内市場は商社経由の販売に任せようとする動きも顕著になっており、ある意味で商社にとってビジネスチャンスが訪れている。このチャンスを捉えて、次の飛躍に向けた基盤作りが重要となってくる。
いまのFA・制御機器市場は昔と違って、一通り製品ラインアップがそろい、顧客の方が製品の特徴や使い方に詳しいことが多い。従って新製品を紹介するとか使い方を教えるといった営業よりは、顧客が何に悩み、その解決にどのように応えることができるかが一つのポイントになっている。
それには顧客の現場に入り、現場を見ることであろう。現場を見れば解決のヒントが浮かび、次の製品開発やソリューション提案にもつながる。
FA・制御機器の流通も、国内産業の成熟や空洞化という課題の中で、売り上げと利益を確保するためには、付加価値を高めた販売が重要になる。顧客の現場で見たアドバイスは、顧客の付加価値アップに繋がり、販売上大きなアドバンテージになる。
こうした細かなアドバイスができるのは商社の強みであり、顧客からも頼りにされる存在であるといえる。