IDEC、三菱エンジニアリング、大阪大学は、このほど世界で初めてロボットを活用した多種類プラスチック分別回収リサイクル装置を開発、流通店舗の「ならコープ・ディアーズコープいこま店」(本部・奈良市、森宏之理事長)、及び大阪大学生活協同組合(本部・大阪府豊中市、出原隆俊理事長)で実証実験を開始した。
地球温暖化対策のため、日本は2020年に温室効果ガスを1990年比で25%削減する目標を掲げており、この低炭素社会実現に向けてのキーワードが資源の有効活用・リサイクルである。
特にプラスチックに関しては、プラスチック処理促進協会の試算によると、07年度のプラスチック総生産量は1420万トンで、廃プラスチック回収量は生産量の約70%に当たる995万トンとなっている。
一方、分別されずに全て焼却されれば、CO2排出量は1897万トンに達するが、生産されたプラスチックを全て焼却せず再利用・リサイクルすれば、削減目標である25%の内の4%にあたるCO2の削減に貢献できるとされている。
現在、自治体や生協、量販店、学校など様々な場所でリサイクルのための資源回収活動が行われている。その中でプラスチック分別に関しては、人の目で分別可能な数種類の範囲での分別回収が現状で、リサイクル可能な素材別回収ができていない状況となっている。
今回行われた、多種類プラスチック分別回収リサイクル装置の実証実験事業は、経済産業省の「平成21年度低炭素社会に向けた技術発掘・社会システム実証モデル事業」に該当する。
開発された多種類プラスチック分別回収リサイクル装置は、IDECと大阪大学のフォトニクス技術を駆使し、世界で初めて6種類のプラスチック素材判別を可能にしたプラスチックセンサを開発、センサの5波長レーザにより、6種類のプラスチック判別を可能にした。
検出可能なプラスチックは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニール)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリロニトルブタジエンスチレン)の6種類。
ラベルやフィルムを外し、洗って乾かしたプラスチック素材を装置の入り口に投入すると、5波長レーザの波長の吸収の違いでプラスチックを選別、20秒に1個のペースで分別される。設計と製作は三菱電機エンジニアリングが担当し、三菱電機が製作した6軸多関節ロボットを世界に先駆けて流通店舗用分別装置に搭載。判定後の回収BOXへの確実な搬送作業を実現した。
また、流通店舗に設置されることから、産業分野で蓄積したIDECの安全技術・製品を多数搭載し、使用者の安全を考えたリスクアセスメントを行っており、世界最高レベルの安全性を実現している。
実証実験として、大阪大学の推進により、まず流通店舗ならコープ(装置稼働日、2月10日~3月11日)と、阪大生協(同2月5~23日)の2カ所の流通店舗で試験設置を開始した。
装置を開発したIDEC、大阪大学などは、「プラスチックリサイクルの拡大が、低炭素社会に有益であることを世界に先駆け実証するもので、社会を変革する崇高なプロジェクトとして展開したい」としており、今後、同装置を流通店舗やリサイクル工場などへの普及・導入を図る方針である。