3、重要アイテムの標準化戦略
経済産業省の「次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会」では26の重要アイテムごとに、①積極的に国際標準化提案をしていくべき分野②国際標準化動向を単に注視していればよい分野③標準化すべきでない分野―の観点から検討を行った。
今後、この検討成果をもとに、3年以内にこのテーマで国際標準化に対応していく。
4、今後の展開
スマートグリッドの国際標準化戦略推進に向けて、次の施策を行う。
①重要アイテムの着実な国際標準化の推進
研究会で特定した26の重要アイテムの国際標準化を着実に推進するため、既存のIEC等の国内対応委員会の強化を図ることが必要である。
このため、経済産業省としては、10年度の国際標準提案型研究予算を重点的に配置することで、体制を強化していく。
また、国際標準化は企業活動に裨益することから、各企業の積極的な対応も必要である。
更に、特定した重要国際標準化項目は、多数のIEC等の国内対応委員会に関係することから、問題意識を共有する機会を提供するのみならず、それらの委員会の活動を支援し、戦略的に対応するため、ステアリング委員会を発足することが重要である。
②関連施策検討や技術開発と国際標準化活動等の一体的推進
スマートグリッドを構成する製品・サービスには、競争・協調領域の分水嶺が定まっていないものがある。これらの製品サービスの今後の方向性を定めるべく、経済産業省では複数の研究会等を発足して産業界、学識経験者と検討している。
具体的な国際標準化の方向性が打ち出された際には、適切な関係者とともに遅滞なく検討を行う。また、先端的な製品サービスについては、標準化に際し、技術的な検証が並行して必要なものがある。例えば、電気自動車用の急速充電器のカプラーについては、09年度から研究開発を行っている。同様に、技術的な検証が必要なその他の分野についても、支援策を検討する。さらに、NIST(米・国立標準技術研究所)は10年からスマートグリッドの相互運用性に関する適合性評価制度を導入することとなっているが、現在その全貌は明らかになっていない。
各国がNISTの動向に注目しており、その制度は他国に影響を及ぼす可能性もあり、わが国としては留意すべきである。
従って、引き続き情報収集に努めるとともに、今後日本企業の輸出障壁とならぬよう、わが国認証機関と対応を検討していく必要がある。
スマートグリッドのように、分野横断的に様々なステークホルダーが集まり、一つの目的に向かって「オールジャパン」としての技術開発、国際標準化、海外展開等の意志決定や対応をしていくためには、工業会等の既存の枠組みとは異なる先進的に取り組んでいる企業等で構成される民間の組織が必要となる。その組織と、それに対する政府側からの適切な支援の在り方について検討する。
なお、「次世代エネルギー社会システム協議会」においては、海外展開における官民からなるフォーラム<スマートグリッド推進協議会(仮称)>を立ち上げることとしており、わが国の国際標準化に取り組む母体として検討されている。
6、諸外国との連携
経済産業省は、97年からNISTと標準化に関する定例協議を開催する等、緊密な関係を築き上げている。
NISTに関しては、具体的な標準化協力の検討で合意しており、今後、わが国企業の優先行動計画の検討への参加等を提案していく必要がある。
スマートグリッドに関しても、09年5月4日に産業技術総合研究所とNISTとの間で、スマートグリッドを含む標準化協力の実施で合意した。また、IEEE、EPRI(米国電力中央研究所)等米国関係者とも継続的に意見交換を行っている。
経済産業省は、欧州、中国等とも国際標準化に関して二者間で定期的に情報交換を行ってきたが、スマートグリッドについても、緊密な関係を築くことが重要である。
更に10年度からは、ERIA(東アジア・ASEAN経済研究センター)加盟国を対象としたワークショップを開催することにより、諸外国との連携を図る。