制御機器・装置では発売後2~3年を新製品とする中で、専門メーカーの製品が短期間で頂点に立った。「育て!期待の新芽」の欄に登場するには相応しくないほど発売後、わずか8年間で業界トップシェアに登りつめたのである。
制御技術の横展開を調べる目的で、2月中旬に開催の第11回空調・衛生・断熱総合機材展「MACS2010」を取材した。知らない出展会社の中に「国際電業」の社名が目に入る。入り口の右側、中央に位置するブースに、あたかも業界に君臨するかのように同社がいる。大きなプラズマ自動切断システムが、3次元CAD作成のデータ通りに歯切れ良くダクトを切断し、指定の場所に電磁チャックで運んでいる。ペン部は、ソレノイドによる独自リンク機構でマーキング。
紛れもない、制御機器メーカーの国際電業(古川長武社長)である。
同社プラズマ販売統括責任者の塚原敏雄氏によると「20年前からプラズマ自動切断機を製造してきたが、2000年に自社ブランドの発売に踏み切った。累計250台は販売した」という。「自社ブランド発売当時は、主要な競合会社は5社であったが、現在3社に淘汰された。継続がシェアアップのひとつの要因」である。
ダクト業界で全く知名度のない同社は、この展示会への出展で進出に弾みをつけた。08年の展示会出展の年には最高の24台を販売、空調用ダクト切断システムメーカーとしてシェアトップの座を射た。
システムに施した独自の技術が業界に新風を吹き込み、知名度と実績を同社にもたらした。
プラズマ自動切断機は「メカ」であったが、それを同社は「電子・電気制御機能搭載のシステム」に変えた。
同社はフットスイッチ、ACソレノイドで最大手であるが、電磁ロール・レール、NC装置、直交ロボット、XYテーブルなどを手掛け、電子・電気制御、回路基板、メカのハード・ソフト技術を備えている。電子・電気制御とメカの技術を集大成し、プラズマ自動切断機を電子・電気システムとして完成させた。
ダクト工事は製作作業が60数%、取り付け作業が30数%といわれたが、同社が発売したプラズマ自動切断システムは、この比率を逆転させるひとつの力になった。高精度、高速性、安全性に優れ、空調ダクト工事業界から一躍認知された。
「プラズマは、ノイズが発生するので位置決めが誤動作しがち。当社はノイズ対策技術を活かして完成」し、お客の誤動作に対する不安感を取り除いた。
展示会では新型KPC―3603を参考出品し「新製品開発にチャレンジする」姿勢を訴えていた。KPC―3603はモータ能力を従来品比で大幅に向上させ、また高精度な減速機を搭載し、切断の速度・精度をさらに高めた。そのうえ、作業者の無駄と危険を取り除く機能も付加している。ヘッド部に独自の電磁チャックによる移載機能を業界で初めて搭載した。従来は切断ダクトを人手で移動させていたが、新型は電磁チャックで吊り上げ所定の所に自動的に移せる。来場者の関心を集めていた。
ダクト市場は300億~400億円といわれ、切断システムは10~20年使われる。メンテナンス体制も欠かせないが「当社の製品は壊れないのが特徴である。故障しても営業所に専任者を置いてすぐに対応」している。制御機器市場で培った技と経験がふんだんに活かされている。
同社は、福祉介護機器関連にも挑戦している。