制御機器市場は昨年秋以降、順調な回復傾向を示しているが、その一方で品不足、納期遅れが深刻な問題となっている。商社筋では「品不足で安易に受注できない状況だ。このままの状況では年末まで品薄状態が続くのではないか」と危惧する声も出始めており、せっかくの注文も売り上げ向上にはすぐに結びつかないというジレンマに陥っている。
制御機器市場は、半導体・液晶市場が急速な回復を見せており、加えてハイブリッド車や電気自動車などエコカーを中心に自動車部品も好調に推移している。中国市場を中心にした外需が牽引していることで、昨年秋以降の出荷実績は前年同月比を毎月上回っている。
また、国内市場では配電・制御盤関連で、太陽光発電や風力・波力発電などの新エネルギー分野や、プラグインハイブリッドカーなど電気自動車関連に絡む新規の案件が増えている。
特に、太陽光発電関連では、ソーラーパークや甲子園球場といった大型のスポーツ施設などで太陽光発電を採用する動きが加速しており、発電を制御する制御盤などの需要が急増している。
電気自動車関連では、駆動源として次世代二次電池であるリチウムバッテリなどが注目されているが、同じく駆動源として注目されている燃料電池の発電量などを計測するセンサなどで新しい需要も出てきている。
さらに、CO2など地球温暖化ガス削減のため、電力監視にかかわるシステムも伸長している。スマートグリッド構想をテーマにしたものが具体化しており、電力会社から送電される交流電力と、太陽光発電や燃料電池などで作られる直流電流を、効率良く配電するAC/DCハイブリッド配線システムの実用化などが進んでいる。
しかし一方で、電子部品や半導体、素材などの品不足と製品の納期遅れが深刻化している。景気低迷が長引いたことで、昨年は制御機器業界でも在庫整理が優先し、生産体制を縮小したメーカーが多かったが、昨年秋口からの需要回復で供給が需要に追いつかないため、メーカー・商社とも納期対応に四苦八苦の状態にある。
さらに、経費削減のため人員も絞ったことで、製造現場や物流分野で人手不足となっているところが多く、供給体制がスムーズに回っていないことがこれに追い打ちをかけている。
メーカーでは製品を作りたくても部品が調達できないところも多く、商社も「せっかく新規の受注を取っても、納品は早くて2カ月~3カ月後で、遅い場合は半年後という状況になっており、注文が来ても安易に受注できない状況だ。このままの状況だと、年末まで品薄・納期遅れ状態が続くのではないか」と危惧している。
3月の年度末を控えており、今年度中の納品を条件に受注した場合では、最悪顧客からのキャンセルも予想されるだけに、待望の景気回復に水を差す結果になることも心配されている。