操作用スイッチと表示灯を一体化した照光式スイッチは、ひとつのスイッチで操作と表示が兼用できることから、スペース性に優れ、使い勝手も良いことなどからスイッチ全体の中での割合を高めている。
日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、2008年度の照光式を含む操作用スイッチの出荷額は338億円で対前年度比21%減少した。08年秋のリーマンショックに伴う急速な経済停滞が大きく影響した。09年度についても制御機器全般に厳しい需要予測はスタートしているが、現状上期(4~9月)の操作用スイッチの出荷額は113億円と前年同期比約56%となっている。昨年6月を底にして制御機器全般に回復基調となっているが、操作用スイッチも月ベースでは前月比を上回る状況が続いており、09年12月、10年1月はようやく前年同月も超える状況が生まれてきた。
09年度通期での08年度実績超えは難しいが、前年度の80%前後の回復は期待できそうだ。
照光式スイッチの主要需要分野である半導体・液晶製造装置は、中国、韓国、台湾メーカーを中心とした旺盛な設備投資を背景に需要が急増している。一部では部品、材料の入手が困難な状況も生まれており、3月の期末を前にこのまま納めることができないと、売り上げ計上が出来ずキャンセルになるのではという心配も出始めている。操作用スイッチはいまのところ他の部品に比べて大きな納期トラブルは起きていないが、今後著しい需要増加が続けば何らかの影響も予想される。
さらに、アミューズメント市場もパチンコ向けの需要が回復しており明るい話題と言える。
大きく落ち込んでいた工作機械の出荷も昨年12月でようやく下げ止まりを見せて、1月も前年同月を上回っている。出荷額はピーク時の4分の1と依然厳しい状況には変わりないが、照光式スイッチにとって重要な市場であるだけに、今後の動向が注目される。
今市場として期待が高まっているのが、新エネルギー関連と鉄道車両関係である。
太陽光発電や風力などの新エネルギー関連は、電力変換用のパワーコンデショナーや受配電機器などで照光式スイッチが多く使用される。まったく新しい市場であり、今後国内外で大きく拡大が見込まれている分野だけに期待は大きいものがある。
鉄道車両向けも、ドアや運転席周り、社内情報表示系統など照光式スイッチの用途が広い。
最近の鉄道車両は、単に人を運ぶだけでなく、快適な乗り心地の追求、車内でも情報収集や仕事ができる場として目的が変わってきている。運転席では、運転に関する情報が集中して表示されるが、照光式スイッチやタッチパネル表示器が大きな役割を果たしている。ドアや座席にも照光式スイッチがついてきており、ドア開閉や座席管理などで視認性を高めている。
鉄道車両のスイッチは、信頼性に加えデザイン性、操作性などがポイントとなっている。車両にマッチしながら、誰が操作しても確実に機能を果たすスイッチが選択の基準として重視されている。
鉄道は環境にやさしいという社会的な追い風もあって世界的に見直されているが、鉄道車両にはスイッチだけでなく、いろいろな制御機器が使用され需要裾野は広い。日本の鉄道車両は国際競争力も高いだけに、新幹線やリニアなどの鉄道技術と一体となった需要創造が進むことで、さらに大きな市場に発展する可能性を秘めている。
こうした分野を含め照光式スイッチの用途は非常に広く、各種産業機械、業務・民生用機器、事務機器、計測機、アミューズメント、医療機器など多岐にわたる。
各種産業機械でも、最も良く使われているのが工作機械と受配電・開閉制御装置などで、工作機械は照光式も含めた操作用スイッチの最も大きな需要分野である。
最近は、タッチパネルやプログラマブル表示器なども多く使われるようになっているものの依然、照光式スイッチの使用率は高い。
さらに、繊維機械、ロボット、半導体・液晶製造装置も安定した需要先といえる。
業務・民生機器では、アミューズメント機器、通信機器、事務機器、計測機器などが挙げられる。このうちアミューズメント機器は、許認可や機種による人気・不人気などによる影響があるものの、電子化によってスイッチと表示が一体で使える照光式スイッチの特徴を最大限活かせることから大きな市場になっている。
放送・映像・通信関連機器向けも魅力ある大きな市場だ。地上デジタル化放送への切り替えやCATVの普及など、さらに放送・映像機器の需要は拡大基調にあるだけに将来への期待も高い。
これらの機器は、頻繁な操作が行われることから操作性が非常に重視される市場といわれ、スイッチメーカーとしては自社の技術の見せ所といえる。
同時に、照光式スイッチに求められる操作感触、視認性、耐久性などといった、あらゆるニーズを集約できることが、スイッチメーカーにとって技術研鑽が図れることにもつながり、この分野向けを意識した開発を積極的に行っている。
日本の放送・映像機器は世界でも高い評価を確立しているが、ここで培った技術を国内だけでなく海外へもアピールすることで、市場拡大につなげようとする動きも目立っている。
NECAのスイッチ業務専門委員会は、スイッチ需要の拡大と市場ニーズの把握のために毎年関連工業会との交流や市場調査を行っている。最近では08年に介護福祉機器業界、09年は放送機器業界を調査した。このうち介護福祉機器業界は、高齢化社会を迎え福祉機器の需要増加が見込まれ、そこには数多くの操作用スイッチが使われている。操作性をはじめ、安全性、視認性、防水性など福祉機器特有のニーズも多い。照光式スイッチをはじめ操作用スイッチの果たす役割は大きいものがある。