リーマンショックで打撃を受け、今なお必死の思いで戦っている企業も多いことだろう。なにせ売れないのだから、販売管理費を削るしかない。一番負担が大きくかつ即効性があるのが人件費の削減。苦境を強いられはや1年半、あれこれ苦労を重ねてきた経営者は、少しぐらい景気が上向いてきたからといっても、そう簡単に楽観視はしないはずだ。いい経験のお陰で経営者は会社にとって「いる人」と「いらない人」を見極めるようになった。
さて、会社が調子いい時にどさくさに紛れて多めに採用した社員が、果たして皆同じ価値なのだろうか。貴方の会社に同じ職能等級、例えば係長や課長などの役付きが複数いるとする。ある人はそのポストに相応しい仕事をし、他のある人はそのポストに足りない仕事をしているかもしれない。また適切な人が正当に人事考課をしているだろうか。人事考課は人事部業務だが、毎日の仕事ぶりはよくわからないので、その部署の上司の考課に任せている場合が多い。しかし部長によっては、自らの立場を脅かすかもしれない優秀な部下に対して「協調性がない」等といった分かりづらい評価でいい人材を潰したり排除したりする場合がある。卓越したことをした部下には「出る杭は打たれる」恐れもある。そこで社員の働きぶりを正当に評価する「見取り」が人事部と各部が一体となり実施していくことが注目されてきている。どういうことかというと人事部社員が各部署に配部されて社員の評価をする経営戦略的な人事考課である。わが社の安泰を目指すどころか、日本産業の在り方がドラスティックに変化しようとしているこれからの5年10年、変化に対応する大変な時代の到来とともに企業は真の優秀な人材を求めており、必要・不要がより明白になってくる。従来は役員をはじめ部課長が年功序列制度で持ち上がってきたが、これからは約10%の社員しか部長以上になれないという経営者もいる。
人事部からの派遣手法はひとつではない。ある会社の場合、人事部は持たないが管理部があり、人事機能をもたせた一切の管理業務を各部に派遣する。営業アシストやスケジュール管理、プロジェクト管理等もさせながら人事考課もしてしまう。この場合のメリットは各部にいる重複した仕事をする社員を不要とし人件費を圧縮できること。ただし、人事考課が出来て一般管理業務もこなすといった能力が高い人を必要とする。そういった人材がいない会社は、人事コンサルタントにアウトソースするのも良いかもしれない。
サラリーマンにとって「出世」は最大の関心事である。ではどうやって生き残れるかといえば、時代や会社に柔軟についていける人物になることではないか。チャイナマネーが世界中を脅かし日本の位置づけが急速に変化することが想定されるこれからの時代、少なくとも英語が堪能でなければまずふるいから落とされる。単なる語学ではなく海外とのコミュニケーション能力、グローバル感覚の高さが評価基準になる。次いで、中国やアジアにおける経験、中国語やその他のアジア語が必要になる。会社自体が中国・アジアを無視できなくなっているのだから当然である。そして組織論を理解する人。この10年程は個人の成果主義が重要視されていたが、今後は組織の力で戦わなければ勝てないからだ。秩序や組織力を身につけていない若者が多くなった昨今、集団的な社会人教育をしていかないと国力がどんどん落ちるのではと懸念する。最後に何より重要なことは、その企業が持つ経営理念や価値観に沿うことができる人である。どんなに優秀でも会社の方針に沿っていなければいらない人である。会社の理念や方針に個々がトライできる努力キーワードが隠されており、果敢に挑戦していく姿勢が一層望まれるであろう。
(シュピンドラー株式会社
代表取締役シュピンドラー千恵子)