国内の鉄道車両・施設関連の電機・部品市場が堅調に推移している。2008年度の鉄道車両電機品出荷額は1610億円、鉄道車両部品出荷額が1061億円に達しており09年度は若干減少したものの、今年度は再び増加に転じるものと予測されている。今後はアジアを中心に新幹線など鉄道車両の輸出が増えることから、電機、制御機器、配電制御システム各社は先行き有望視し販売攻勢に出ている。市場も国際化で新規進出を受け入れる方向に進むものと見られる。
国土交通省の鉄道車両生産動態統計によると、鉄道車両の生産は05年度1924両、06年度2186両、07年度2460両、08年度2279両とリーマンショックによる民間設備投資が急減する中で堅調である。
電機、制御機器、配電制御システムと関連の深い08年度の鉄道車両電機品の出荷額は1610億円(国内64%、輸出36%)、部品の出荷額は1061億円(同84・5%、同15・5%)である。
鉄道車両には電動機、変圧器、変換装置、補助電源装置、制御装置、モニター装置、継電器、警報装置、ドア駆動システム、オープンネットワークなどに制御機器、配電制御システムが採用されている。
また、近年は地下鉄などで駅定位置停止制御、ホーム柵設置、ワンマン運転による自動列車運転装置が導入されてきている。
安全対策も強化されており、制御機器、配電制御システムの用途が増加傾向にある。
「遮断機の開閉用リレーの動作状況を、モニタリングするのにリレーセンサーが使用されている。また、直流電流変換器にも磁気センサーを採用していただいている」(磁気センサーメーカー)。
「ホーム柵の制御装置を受注でき、不況下で新規売り上げにつながった」(配電制御システムメーカー)。
鉄道車両・施設に対する制御機器、配電制御システム各社の期待は大きい。
わが国の鉄道局事業費は、今年度3446億円が計上され、新幹線整備や都市・幹線鉄道関連に3201億円を投入する。
政府は輸出に対しても「官民連携のもとで海外展開を積極的に推進」する。
総合電機、制御機器、配電制御システム各社は、こうした鉄道車両・施設関連市場への販売攻勢に乗り出し車両メーカー、装置メーカーとの取り引きの開拓に取り組んでいる。
従来から、市場に進出している専業メーカーも営業体制を強化している。
共立継器は今秋開催の鉄道技術展に出展し、保護継電器、電磁接触器などをPRし新規開拓につなげる。
不二電機工業、日幸電機製作所は、日本鉄道車両工業会の賛助会員に入会し顧客とのつながりを強める。
ある制御盤メーカーは「鉄道技術の海外進出にあわせ海外拠点開設の可否を検討」している。
鉄道技術の国際化に伴い、鉄道車両・施設市場も縦割りの企業間取り引きからオープンな取り引き関係に移行しつつあり、市場進出がし易い環境が整いつつある。