製品仕様の改良では、コイル巻線の工夫、鉄心の改良などがある。巻線では、複数巻線シングルコアに対して、複数コアのシングル巻線にすることで大幅に薄型化できる。近年では、巻線の自動化技術も進み、独自の自動巻線装置を使うトランスメーカーもある。
民生用途の小型タイプなどでは、既に巻線の自動化がなされているが、大型タイプが中心となる産業用では、まだ手作業で行っているところが多い。自動化は、同じ巻線数でも手作業などの従来方法よりコンパクトに巻け、小型軽量化につながっている。
トランスの巻線作業はある程度熟練が必要で、ベテラン職人の減少や人件費対策などのコスト面からも、巻線の自動化が注目されている。コイルボビンにノーカットの鉄心を巻き込んだタイプもあり、鉄心の有効断面を均一にすることができ、磁路の短縮が図れる。さらに、コイルボビンと鉄心の一体化構造で、高い絶縁性と正確な形状を実現、しかも自動巻線も使えるといった特徴を持つ。
また、トランスにノイズ対策機能を付加する製品が増加している。ノイズ対策には一般的にノイズ対策専用トランスを採用するが、トランスがノイズ対策機能を持つことにより、ノイズ対策専用トランスが不要となり、コスト、スペースなどでメリットが生まれる。
さらに、日本は山間部や日本海沿岸など、地域によって雷被害を受けるところが多く、そのような地域で使用するトランスには、雷対策を施したトランスが使用されている。このように付加価値による需要の喚起も、トランス市場を盛り上げている。
安全重視の観点から、焼損事故の再発を防止するため、自己保持型サーマルプロテクタを内蔵し、所定の動作温度に達すると、トランスや電源機器の電源を切るまで接点を開放し続ける事故再発防止トランスなども注目されている。
産業用トランスは、電気的安全性確保で重要な役割を担っており、今後とも安定した需要が見込まれる。トランスメーカーは種々の課題を抱えながらも、コスト対応、新規販売ルート、新規顧客の開拓などに取り組んでいる。市場を取り巻く環境は外需を牽引役にして上昇基調に転じており、今後は新たな進展が見られそうだ。