電設・制御・電子機器流通商社では、取り扱いメーカーに製品の値上げを待望する声が高まってきた。需要の回復傾向と原材料の再高騰を機に、収益の改善を図りたい考えである。メーカーも電子部品の不足による納期遅れの中で非鉄金属類、金属類、樹脂の値上がりが経営を圧迫しており、価格改定に踏み切る公算が強まっている。欧州の経済不安があるため様子見が長引く可能性もある。
2009年度はリーマンショックによる受注急減に見舞われる中で、値引き要請が加わり流通商社は粗利益も2~3%減少し、欠損会社が続出した。
昨年後半から受注が回復しているものの、品不足で受注水準を下回る売り上げで推移している。「受注は前年と比べ40%増加しているが、売り上げは20%増加にとどまっている」(中堅電子部品商社)。「建築着工件数が依然低迷しており、まだ売り上げはそれほど増えていない」(電設商社)、「受注はピーク時の7割まで回復したが、モノが入らないので売り上げにつながらない」(制御機器商社)など需給のアンバランスが経営を不安にしている。
こうした背景の中で、原材料が再び高騰基調にあり、先行き受注見通しの不透明さが増している。そのため、現在の時期を逃しては、収益改善が難しくなると見て、流通商社では仕入メーカーに値上げを求め始めた。
流通の粗利は現在、業種によって若干の差があるものの、総じて15%前後である。欧米に比べ10ポイント低く、しかもデフレ状態が長年続いているため縮小経営を余儀なくされている。
それだけに「メーカーが値上げしたときに、受け入れない顧客に対しては販売を断った。今回、メーカーが値上げすれば、収益を向上させられる」と値上げ期待が高まる。メーカーでは特殊仕様品で値上げしているところもあるが、標準品に対しては変圧器など一部製品を除き価格の改定が行われていない。「原材料が高くなっているので値上げしたいのが本音である。しかし、販売競争が激しく、他社の動静を見ている」(電設メーカー)、「部品が入手出来なくて生産に支障をきたしている。素材の値上げのほか、プリント基板も値上がりしているので価格引き上げをしたい」(制御機器メーカー)、「既存製品の売り上げはピーク時の8割が限度である。この時期に値上げしたい」(制御機器メーカー)とメーカーの間でも価格改定の時と捉えている。しかし、「値上げしないでシェアを獲得する」方針のメーカーある。メーカーの今後の価格対策が流通業界の経営を左右する重要な時期を迎えているようだ。