PLCアプリケーションの開発効率化指針「効率的なPLCアプリケーション開発手順」②

3.2.2
要求仕様整理

システムの動作仕様が不明確ではアプリケーションを開発できない。仮に、不明確のままで開発を進めた場合、開発の終盤で手戻りが発生したり、完成品の機能または品質が使用者にフィットしないなどの、膨大なロスの発生要因となることはいうまでもない。

したがって、システムの動作仕様を決定するために、要求仕様を整理し、曖昧さをなくし動作仕様を明確にすることが大切である(この資料では、既に要求仕様が明確である前提で説明を進める)。このシステムの動作仕様は、3.1による。
3.2.3
機能要素の抽出

まず、搬送ユニットの動作及び機能に着目し、機能要素単位を整理する(図6)。
この搬送システムは、主に3パターンの機能を果たす搬送ユニットによって構成される。機能要素の抽出分析には、様々な方法が考えられるが、アプローチ例は次による。この例ではa)のアプローチを採用している。

a)
加工物(ワークの流れ)を中心に、機械・設備の機構部の動作を分析、パターン化し、機能要素ブロックを抽出する。

b)
動作フローから制御フローを検討し、制御処理の中から機能ブロックを抽出する。

c)
データ及び信号の流れに着目し、機能ブロックを抽出する。

d)
工程に着目し、機能ブロックを抽出する。

e)
繰り返し用いることができそうな部分及び用いることができない部分に着目し、機能ブロックを抽出する。

次に、“合流"及び“分岐"の機能を、抽出した搬送ユニットの機能要素単位を用い、細分化する(トップダウンアプローチ)。逆の見方をすると、抽出した搬送ユニットの機能要素単位を、“合流"及び“分岐"の機能にグルーピングする(ボトムアップアプローチ)。

さらに、ワークの渋滞を監視するために、ワークが停滞する可能性がある各ポイントに、満杯検出機能が必要であることがわかる(図7)。
3.2.4
構造化

各搬送ユニットに指示を送り、搬送システム全体の動作を指示する機能を“運転方案"部とし、3.2.3で分割した“搬送ユニットの個々の機能"部との関連(相関)を分析すると、図8に示す階層構造となる。別の機能間でも、機能が重複しており、その機能ブロックは共通化できることがわかる。
物理的な機器(機械)の機能、論理的な工程(プロセス)などの切り口で分析すると、その構造は階層構造をとる場合が多く、大規模になればなるほどその傾向は強くなる。階層構造の分析を進めて共通機能を抽出すると開発量を最適化することができる。さらに、その部分に既に存在する機能部品を用いることができる場合、開発量を最小限にすることが可能である。
3.3
設計

ここでの設計とは、3.2での分析結果を元に、搬送システムの機能要素をPLCアプリケーションのS/W要素、すなわちFBへ当てはめ、少しずつ仕上げていくことを意味する。

なお、FBの概要及び特徴については、箇条5を参照されたい。

3.2の分析結果によって、図9の階層構造が得られている。
まずは、比較的FB化しやすい最下層の基本部(破線囲みの部分)から設計を始める。この部分は、機能要素が単純な動作仕様にまで明確になっている場合が多く、また、一つの機能がそのまま一つのFBに対応させやすい場合が多い。その後で、これら基本部の小機能を組み合わせて、より大きな機能から構成される応用部の設計を行う。

基本部FBには、例えば“満杯検出"機能が三つある。このとき、“満杯検出"機能を一つのFBとして設計・製作(プログラミング)すれば、残りの“満杯検出"はその流用で済む。そのため、破線囲みの部分には13の機能があるが、実際には、7種類のFB(満杯検出FB、エンドストップFB、切出FB、ディバイダFB、ベルトトランスファFB、分岐モード制御FB、合流モードFB)の設計・製作(プログラミング)で済むことになる。(つづく)

【日本電機工業会PLC技術専門委員会プログラミング・ツール分科会の「PLCアプリケーションの開発効率化指針」より転載】

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