配線接続機器市場は、08年の金融危機以降、設備投資抑制の影響を大きく受けていたが、昨年の5月、6月を底にV字に近い急回復を示している。特に、大きな市場であった半導体・液晶製造装置分野。電子部品製造分野が大きく回復しているほか、デジタル家電を中心とした民生分野は、産業分野ほどの打撃を受けておらず、電子部品関連分野など好調に推移している。
加えて、太陽光発電や風力発電などの新エネルギー発電関連、さらに省エネ・環境への配慮から鉄道車両分野などでの需要が急増している。また、電力送配電の効率化を狙いとしたスマートグリッド絡みでの新しい市場創造も具体化しつつある。
さらに大きな市場である電力など重電分野は市場が落ち込んだ昨年も堅調な動きを見せており、今年に入ってからもその動きに変化はない。海外での電力投資も活発で、特に中国や東南アジア、中近東、ロシア、さらにインドやブラジルといった新興国では、電力、天然ガス、鉄鋼関係を中心にプラント設備投資が進んでおり、モーターや発電機などの需要増に繋がっている。
一方、工作機械関連分野、ロボット関連分野は、回復が遅れ気味であったが底を打ち、上昇し始めた。ロボット関連は、マニピュレータ・ロボットの生産が今年1月~3月期に7四半期ぶりに前年同期比プラスに転じ、ピーク時の60%近くまで回復してきた。工作機械も日本工作機械工業会の4月の受注速報によると、内需が前年同月比187・3%、外需が同445・4%と大きく回復しており、今後の需要回復に期待がかかる。
しかし、需要の急回復を見せる市場の動きと背反するように、メーカーでは一昨年から昨年にかけ、大幅に生産を抑えたことから、今回の急速な需要回復に供給が追いつかず、納期が大幅に遅れる現象が相次いでいた。最近になり、かなり供給が追いついてきたが、まだまだ予断を許さない状況である。
加えて、原材料の高騰と品不足が徐々に深刻になりつつある。銅や鉄が昨年の2倍ほどに値上がりしているほか、原油価格の高騰から樹脂も15%~20%ほど値上がりしており、すでに一部の端子台メーカーでは、自社努力だけでは対応できないとし、商社に製品価格の値上げを打診するメーカーも現れてきている。原材料の高騰と相まって懸念される材料となっている。
端子台、コネクタなどの国内市場規模は、NECAの接続機器を含めた制御専用機器の出荷統計によると、08年度(08年4月~09年3月)は後半からの厳しい経済状況を背景に前期比12・8%減の1099億円、09年度は前半まで厳しい状況が続いたが、夏頃から需要が急回復し年間では同6・8%減の1025億円となった。10年度も需要は順調に回復すると予想し、同22・0%増の1250億円と見ている。また、コネクタは、コネクタを手がける大手メーカーがNECA会員外であることから、経済産業省の機械統計によると、09年度(09年4月~10年3月)では、前期比4・9%減の4172億円となっている。NECA会員以外も含めると、端子台が約300億円強、コネクタが約4200億円、ケーブルアクセサリー・配線ダクト類で約70億円と推定され、合計で約4500億~4600億円という大きな市場を形成している。
製品傾向としては、民生機器ではプリント基板タイプが多く採用されており、端子台市場の大きな牽引車となっている。プリント基板対応タイプは、インテリジェント化、薄型化、省スペース化、狭ピッチ化が進んでおり、さらなる伸長が見込まれる。
配線作業の省力化につながる圧着端子とバネを一体化したタイプは、各社独自のノウハウで製品展開を図り定着している。バネ式端子台は、長期間の振動にも強いため(振動によるネジの緩みがない)、公共の輸送・交通設備にも採用されるなど、その使い勝手の良さが日本市場でも認められつつある。
また、欧州式の圧着端子を使わないタイプも浸透している。作業性の良さと安全性などが大きなポイントといえる。最近は国内メーカーでもこのタイプを品揃えするところが増えており、主流になりつつある。
リレーバリア、ランプバリアなどのコネクタ接続タイプでは、小型・軽量化が進み、収納ボックスの小型化、コストダウンが図られているほか、防爆構造タイプの製品も伸長している。
現場でのアース工事が不要で、非本質安全端子側の配線は電源2本とコネクターだけのため、配線工数の大幅削減につながる。国内の防爆規格やNK規格、さらに欧州のATEX、米国のFM、カナダのCSAといった海外規格にも対応している。また、各メーカーでは端子台の付加価値を高めるために、各種の新製品を投入している。特に、省配線化ニーズに応え、コネクタ化や複合化(ハイブリッド)などの工夫を行っている。
省配線化は、盤と盤、盤と機器、機器と機器の間をつなぐ上で作業やメンテナンスの工数削減に繋がることからニーズが高く、中でも配線作業の軽減を求める声は依然として根強い。応用製品として、機器間や設備内の省配線を図る省配線機器・システムや伝送ターミナルなどは、接続以外の付加価値で、新しい市場を形成している。
配線作業の容易化・省力化では、スタッド形端子台の需要が急増しており、各メーカーとも意欲的に新製品を投入している。スタッド形端子台は、配線作業が容易で作業の省力化が図られるとともに、配線効率が高いのが特徴である。さらに、挟み込みなどの接続不良を未然に防止できる効果もある。
特に、ネットワークのオープン化が進む中で、こうした省配線機器の登場が大きなポイントとなっている。
また、最近の新製品では、安全確保と作業の効率化を同時に提案したものとして、圧着端子と端子ねじを正常な位置関係に規制する、配線脱落防止機能を備えた端子台が、工事現場などでの配線脱落事故を未然に防ぐものとして注目されている。
そのほか、ハイブリッド端子台として、電子部品などを搭載し付加価値を高めたものも多い。サージアブソーバー素子、リレー、スイッチ、断路器、ヒューズ、LEDなどを搭載したものが一般的で、リレー搭載タイプなどは端子台メーカー以外にリレーメーカーの一部でも扱っている。
また、実配線削減でスペース効率の向上を図るため、リレーやサーキットプロテクタ、ヒューズ、スイッチを中継端子台に搭載し1ユニット化を図ったタイプや、中継端子台が不要な機能搭載型リレーターミナルも登場している。メンテナンス性では、電流容量の区分や回路のグループ分けなどに端子台のカラー化で対応するケースが増えている。
さらに、工数削減の観点では、PLCの旺盛な需要に対応し、既設のPLCに接続されたケーブルを繋ぎ替えることなく、新設のPLCに置き換えることが可能なPLC変換アダプタや、PLC対応の中継コネクタ式端子台も伸長している。PLC変換アダプタは、工数が約5分の1に低減できる点が特徴となっている。
端子間ピッチ8ミリというスペース効率の向上を図った断路端子台も、各種のプラントで採用されている。前述のLED搭載タイプなどもメンテナンスを容易にするといえる。加えて、端子台の材質に耐油・耐薬品性の高いものを採用した製品も登場している。
端子台市場は、国内メーカー、欧州メーカーに加え、最近は韓国や中国メーカーも参入し、グローバルな販売競争が激化している。中でも欧州メーカーは独自構造をポイントに攻勢を強めて実績を上げている。