一方、高度な温度制御要求に対応するため、目標温度変更時の時間短縮、外乱発生時の整定時間の短縮、安定性の向上、目標温度への追従性向上、立体の温度の均一性向上などが図られている。機能の向上と同時に操作がし易く使い勝手の良さが追求され、汎用標準品のほか、ボードタイプ、モジュールタイプ、特殊仕様品など製品幅が広がっている。特にモジュールタイプは、視認性が高くオペレーターのミスを防ぐほか、集中管理がしやすい特徴を持つ。
さらに、警報、偏差値、測定値に連動したり、表示色を固定にすることで、到達信号の判別に利用したりといった多様な使い方が可能になる。
また、温度の記録・監視機能を一体化した機種もある。温度の履歴が、容易に監視できる利点がある。
メモリーカードタイプは、製品ごとの温度管理を統一でき、工場や機械、製造日が異なっても常に共通の温度管理での運用が可能になる。
温調ボード、シーケンス制御とプロセス制御を組み合わせたシステムボードなども開発されている。温度調節器(計)のパラメータ設定や管理などを、パソコンで行うことも一般化している。
温度調節器(計)のパネル前面は、PV(測定値)表示部、SV(目標設定値)表示部、LCD表示部(SVNo.出力・チャンネル・各種設定パラメータなど)、ステータスランプ表示部(制御動作非実行・勾配制御実行・手動調整実行・リモートSV実行・イベント出力・外部制御出力・外部SV切り替え設定・通信モード・オートチューニング実行・調節出力モニターなど)、キースイッチ(画面変換・変更設定パラメータの選択・数値の増減・数値データの登録・手動調節モード切り替えなど)、赤外線通信部があり、高度な制御設定を容易にしている。
制御演算にはPID(比例・微分・積分)設定で制御性を向上させているが、ファジィ推論、ニュートラルネットによってPIDをベースにより理想に近い温度制御を可能にしている。また、繰り返し運転で制御対象をより深く把握し制御の緻密化を高めている。
熱電対や測温抵抗体などのセンサーからのマルチ入力による温度制御が増加しており、入力種別によるマルチ化が進んでいる。直流電圧、直流電流にも対応できるようになっており、湿度や圧力のアナログ量の制御を始め、タイマー動作、ヒータ断線検知・警報、操作端短絡検知・警報機能、さらに多点制御、カスケード制御、比例制御が可能になり市場拡大につながっている。
温度管理はセンサーで計測し、調節器で制御演算し、アクチュエータで出力する制御系のループ。そのため温度管理でも「計測」「制御」「監視」は三位一体で構成されており、最適な機種選定が必要である。
このところ温度調節器(計)メーカー各社は、高品質な温度制御を、顧客別に実現するソリューション提案型営業を強化している。
温度調節器(計)だけでなく、熱電対・白金測温抵抗体・温湿度センサーなどの入力機器、ソリッドリレー・電力調整器・サイクルコントローラの出力機器、ソフトウェア・各種警報器などの周辺機器もそろえながら、用途に最適な温度制御を提供している。
また、汎用タイプでありながら、高機能な温調ニーズに応えるため、アナログ入力タイプや3相ヒータ断熱検出機能などを搭載し、圧力、流量、レベル、湿度、重量など、温度以外の制御にも使用できるタイプも伸長している。このほか、配線作業の効率化を図るため、欧州タイプの圧着端子レス端子台を搭載するメーカーも増えている。
温度調節器(計)は、国内では汎用タイプと高機能タイプがそれぞれに二分化され、両分野ともそれぞれ求められるニーズに呼応するように各種のリニューアル、新製品の開発が進んでいる。これに対して、中国など新興国では単純な温度調節ではローコストなローカルメーカー品も出始めている。外観だけを真似たコピー的な温度調節器(計)も目立っており、こうした製品との価格競争も始まっている。現状受注先行のため、この影響は大きなダメージにはなっていないものの、今後激しさを増すものと見られる。高機能と単機能に価格戦略も巻き込んでの、新たな市場展開に入りつつあるといえる。