配線接続端子台をはじめ、各種オートメーション機器の総合メーカー、フエニックス・コンタクト(横浜市港北区新横浜1―7―9、青木良行社長)は、本社のあるドイツに4カ所のほか、海外5カ所の生産拠点を持ち、世界60カ国以上で営業を展開している。
地球温暖化問題が世界的な課題になる中、環境先進国であるドイツではものづくりを行う工場でも環境への意識は高いが、同社もその例外ではない。
ドイツ・ブロンベルグにある本社工場は敷地面積約3万3000平方メートルの広さを持つが、今年1月からプリント基板用端子台及びコネクター「COMBICON」の生産を行う新工場が稼働を始めた。2・5階建て延べ床面積約2万5000平方メートルの新工場は、「ドイツでの観光コースの一つにも入っている」(同社リージョナルマネージャーアジア・パシフィックマネージャー・フランク・アッカマン氏)というほど自慢の工場。
それは、エネルギーの利活用を徹底的に考え、環境への負荷を最大限配慮した工場であるからだ。
昨今では、エネルギーというとソーラーや風力などの自然エネルギーが挙げられる。同社もソーラー発電には従来から取り組んでおり、新工場の屋上には720平方メートルのソーラーパネルが敷かれて、全社では年間約8万3000kWの発電量を誇る。さらに、地熱エネルギーの活用も行っている。地熱は2008年に完成した新ロジスティックスセンターの地下65メートルに地熱を活用するためのチューブを配管し、その配管内の液体を温めることで、約15世帯が年間に使用する電気に匹敵する熱量を利用している。これはヒートポンプ方式で主に暖房用に使用している。再生エネルギーとして、機械から発生する排熱の利用にも取り組んでいる。排熱の活用は古い工場ではなかなか難しいことから、「20年ぐらい経った工場から改築を進め、(エネルギー活用に)最新技術を導入している」(アッカマン氏)という。
本社工場ではこうした地熱の活用、排熱の利用と熱の回収などで、年間300万トンのCO〓削減と70万リットルの灯油の節約に繋がっているという。こうした企業姿勢から同社は、2010年の「Germany―Land
of
Ideas」に選ばれた。
同賞は06年のドイツで開催のサッカー・ワールドカップをきっかけに、ドイツの革新的テクノロジーを表彰する目的で設けられたもので、今年で5回目。同社は2200社の中から、サステナビリティに貢献するドイツ企業のモデルとして選ばれた。同社は08年にも、若手社員を登用する企業として受賞しており、今回が2回目となる。
環境への取り組みはエネルギー問題だけでなく、環境汚染、リサイクル、騒音など多岐にわたる。
新ロジスティックスセンターは、入出荷に伴う周辺住宅への車の騒音対策を考慮し、工場敷地の一番奥に配置している。
また、メッキ工場では床を2重化することで、万が一、化学薬品などが漏れても土地などへの影響を防止できるようにし、排水も人が飲めるような状態まで処理している。ドイツでは何か事故があった時には、その原因が自社にないことを自ら証明する必要があるだけに、こうした取り組みは厳しい。
製品の素晴らしさだけでなく、企業姿勢の点でも素晴らしさを追求するドイツ気質が表れている。