今から2000年前に盛えたローマ帝国の皇帝は、現代の大統領に近い存在であったようだ。貴族層で構成される元老院と、市民で構成される市民集会が認めなければ皇帝になれなかった。現代の大統領は選挙の結果で交代するが、ローマ皇帝は終身であったため暗殺という手段で民意が問われ、結果的に皇帝の交代劇が行われたという違いのようだ。
ローマを共和制から帝国へ移行の楚をつくったのがカエサルであったが、カエサルは秀でた戦術家でもあった。カエサルの戦術は、機動力はどんな戦術にも勝るというクラウゼヴィッツの戦術論を地で行っていた。それに多勢な敵に対しては徹底的に自軍の現状と敵の現状、そして戦場という現場を知り抜き、勝てるという見込みを立てて冒険を試みた。
期待の目で見た現実ではなく、素の現実を見ての冒険であったから無謀ではないのだが他人から見れば、やはり冒険のように見えてしまう。だから、勝ちパターンのセオリーにはなり難いが血湧き肉躍る話には事を欠かない。
そのカエサルがファルサロス野でポンペイウスを破り天下を取り、その足でエジプトに渡りクレオパトラと組んで治安を整え、更に小アジアに遠征してゼラの戦いで勝利。ローマの東の国境の安全を成し遂げた。ゼラの戦いの報告をローマの元老院に送ったその手紙文言があまりにも有名な「来た。見た。勝った」と言う簡潔な文章である。
現場に駆け付け、現場となる市場や顧客、そして自社の実力と競合他社の全貌を見破れば勝てる方策が見えてくるという、現代の営業戦線に相通じる報告の手紙の内容である。まさに孫子の言う「我を知り、相手を知り戦えば、百戦して負けることなし」という有名な兵法を思い起こさせる。