村田製作所はこのほど、ワイヤレスで電力を供給できる電界結合方式の電力伝送システム「LXWSシリーズ」を開発した。同装置にノートPCや携帯電話、DSCなどを置くだけで充電できる。スマートデスク実現のほか交通機関や宿泊施設など、幅広い分野に向け拡販を図っていく。照明用や携帯電話・ノートPCなどのモバイル機器の充電機用から販売開始し、その後機器内蔵用製品の開発を行う予定で、10年秋から月産1万台の量産体制を目指し、12年に15億円の売り上げを目指す。サンプル価格は個別に対応、量産時のターゲット価格は送・受電モジュール合わせ980円。
近年、モバイル機器の普及に伴いワイヤレス電力伝送システムの開発が盛んになっている。開発事例が多い電磁誘導方式は、充電ポイントから少しずれると充電できなくなるという課題があった。
同社が開発したシステムは、電界結合型のワイヤレス電力伝送技術を持つTMMS社(京都市中京区、代表ヴォグレ・ステファン取締役)の技術を用い、ワイヤレス電力伝送システムを共同で開発したもの。
電界結合方式は、送電側と受電側に電極を設置し、電極間に発生する電界を利用してエネルギーを伝送する方法。電極間に容量が発生するので容量結合方式と呼ばれる。電源コードを介さずとも、充電台に機器を置くだけで充電できる。
充電ポイントを気にせず充電でき、電極構造を工夫したことで位置自由度が高く利便性に優れる。伝送電力は1~10W、伝送効率はワイヤレス伝送部のみで90%以上と高効率である。
一つの充電台で複数種の電子機器への充電が可能なほか、独自の安全制御方法により、伝送部の発熱を少なくし機器への影響を軽減した。
位置の自由度が高いので動くものにも充電可能。さらに電力伝送のインターフェースとなる電極部が非常に薄く形成でき、機器への組み込みが容易である。充電台の素材は透明、フレキシブル樹脂など、様々な材質が利用可能で高いデザイン性が実現できる。
外形寸法は、送電モジュール50×25×10ミリ。受電モジュール10×10×1・5ミリ(3W品でのターゲットサイズ)。特許10件出願中。
携帯電話、携帯音楽プレーヤー、DSC、ノートPCなどモバイル機器用や、機器組み込み用など小型化用途への展開を図るほか、照明、装飾品、住設関連などへも製品化を図れる。さらに、オフィスのデスク自体の充電機化を目指し、ノートPC、携帯電話、DSCなどを置くだけで充電可能なスマートデスクの実現も目指していく。
また、交通機関や宿泊施設などにも応用を図る計画で、ACアダプタや電源コードが不要で、どこでも充電可能なワイヤレス電力伝送社会の実現に向け、事業展開を加速させる。
なお、TMMS社は06年10月設立、技術開発支援及び市場開発支援を主事業としている。