パナソニック電工は帝人と共同で、高耐熱性バイオプラスチックを用いた植物度(プラスチック成形材料樹脂の中に含まれる植物由来樹脂の割合)80%、成形サイクルを50%短縮したポリ乳酸樹脂成形材料の開発に成功した。パナソニック電工では7月から携帯電話やモバイル機器、デジタル家電製品向けに同成形材料の発売を開始、12年度に同成形材料年産1000トン体制を目指す。
地球環境保全と循環型社会実現のため、石油由来のプラスチックから植物由来のプラスチックへ移行する動きが高まっており、家電製品、ノートパソコン、携帯電話、自動車の内装部品などへの採用が拡大している。中でも、代表的な植物由来のプラスチックのポリ乳酸は、耐熱性が低く成形サイクル(成形工程に要する時間)が長いことから、石油由来のプラスチックを混合した成形材料が開発されているが、耐熱性や成形性向上のために石油由来のプラスチックを多量に配合する必要があり、植物度が低下するという課題があった。このため、高植物度で耐熱性や成形性に優れる成形材料が求められていた。
帝人は、06年に従来のポリ乳酸をはるかに上回る耐熱性(融点210度以上)や、高い成形性(半結晶化時間を25~20%に短縮)を有するバイオプラスチック「バイオフロント」を開発。その後の技術改良により優れた耐加水分解性を実現した。
パナソニック電工は、このバイオフロントをベース材として、独自のコンパウンド設計・製造技術を用いることで、80%という極めて高い植物度を有しながら高い耐熱性を備え、さらに、成形サイクルを約50%短縮できるポリ乳酸樹脂成形材料を開発。このほど、家電製品やモバイル機器の筐体用途向けに「MBA900H」として製品化するに至った。
帝人は、すでにバイオフロントを衣料・インテリア・自動車・家電製品など、さまざまな領域で展開しているが、パナソニック電工のMBA900Hの開発を機に市場開拓を加速させ、11年度に年産5000トン規模、将来的には数万トン規模の量産体制構築を目指している。
一方、パナソニック電工は今年7月から携帯電話・モバイル機器・デジタル家電製品を中心にMBA900Hの発売を開始。12年度にはMBA900Hを含む高植物度ポリ乳酸樹脂成形材料で、年産1000トン体制を目指す。