1現状
我が国アルミニウム産業は、1980年代に国内でのアルミニウム製錬事業から撤退しており、現在は原料となるアルミニウム新地金のほぼ全量を輸入し、板や押出等のアルミニウムの加工製品を製造するアルミニウム圧延業が中心となっている(事業形態は、主として顧客により調達・支給された地金を加工する賃加工方式を採っている)。
アルミニウムは、鉄の約3分の1の軽さであり、錆びに強く加工性が良いなど優れた特性を持つ。このため、90年代以降総じて需要は横ばいで推移しているが、板や押出等の加工製品は、自動車を主とした輸送分野、建設分野、電気機械器具、食品包装など広範な分野で利用されるとともに、様々な製品に必要不可欠な中間素材として、用途の多様化が進んでいる。特に近年、地球環境保全の観点から自動車の軽量化を推進するために、自動車におけるアルミニウム部材の適用が拡大している。
また、アルミニウムは、リサイクル性に優れていることから製品スクラップの価値が高く、飲料用アルミ缶を始めとして、活発なリサイクル活動が展開されている。
アルミニウム圧延業は、出荷額約1・2兆円、従業者数約1・8万人という規模である。海外においては、製錬等の川上工程を持つアルコア(米)、ハイドロ(ノルウェー)、圧延専業のノベリス(加)の欧米3大メジャーによる寡占体制となっているが、これと比較して我が国のアルミニウム圧延企業の規模は小さい。
2我が国産業の強みと弱み
(1)強み
品質の要求水準が高い自動車業界などの国内顧客に対して、高品質・少量多品種の製品を生産・供給できる「顧客対応力」が国際競争力の源泉となっている。我が国アルミニウム圧延業が、今後も持続的に発展していくためには、今後も先駆的な国内顧客との連携を深め、事業展開を推進していくことが重要である。
(2)弱み
資本力を生かして規模の経済を追求し、大量生産・専門工場方式を取る海外メジャーと比較すると、我が国は1社当たり研究開発費や生産性で見劣りする。また、鉱山開発から精錬、加工までを1社で手掛ける垂直統合型海外企業と比べ、我が国は原材料調達価格の変動リスクを抱えている点、賃加工方式を取っている点及び国内で過当競争下にある点において、低収益にならざるを得ない。
3世界市場の展望
国内では近年、住宅・ビル建設需要などの低迷を受け、建設向け需要が落ち込んでいるが、一方で中国やインドなど新興国では、高い経済発展を背景として、建設向けなどの需要が堅調に推移している。また、地球環境保護の観点から、海外においても自動車の燃費改善に向けた軽量化が進められており、アルミニウム部材の自動車向け用途の需要が拡大している。
4我が国産業の展望と課題
(1)今後の競争力強化に向けた対応
我が国アルミニウム圧延業が競争力を強化するためには、(1)より高度な加工を要する製品等に特化するなど常に最適なビジネスモデルを追求すること、(2)高品質・環境配慮・少量多品種生産など、これまで培ってきたきめ細かな対応力をもとに国内の自動車・家電等の顧客産業と積極的に連携すること、(3)加工技術力を更に強化することなどが必要である。
また、中長期的な視点から、次世代を支える人材の確保・育成等を目指し、産学連携を強化することが重要である。
(2)東アジアを中心としたグローバル戦略
中国、東南アジアを中心に、顧客企業の海外進出に伴って進出し、現地生産を行うケースが多い。
今後、高性能品や高付加価値品で更なる差別化を図るとともに、技術流出防止の観点から、特許やノウハウの管理徹底が必要である。