1、現状
板ガラス産業は典型的な装置産業であり、限られた企業により事業が展開されている。国内では3社(旭硝子、日本板硝子及びセントラル硝子)、国際的にも我が国企業を含め主要5社で世界市場(中国を除く)の6~7割を占める供給体制となっている。
機能性ガラスには、液晶ディスプレイ(Liquid
CrystalDisplay、LCD)
やプラズマディスプレイ(Plasma
Display
Panel、PDP)用の基板ガラス、パソコンなどのハードディスクドライブ用ガラス基板、光学機器用のレンズなどがあり、それぞれの分野に関する企業がその技術力を活かして、顧客から求められる素材の開発・生産を行っている。
2、我が国産業の強みと弱み
(1)強み
我が国板ガラス産業は、技術・品質管理能力の面で世界最高水準にある。特に、平滑性に富んだもの、軽量化に対応した薄板ガラスなどの分野では高い競争力を有している。こうした技術力と資本を基に、積極的に海外進出あるいは資本参加し、その結果、国際的にもトップクラスの企業となっている。経営指標をみても、国内メーカーの収益率は海外メーカーと同水準となっている。
機能性ガラス産業も、我が国企業が高い技術力に支えられた優位性を背景に高いシェアを有する製品を保持している。
(2)弱み
我が国板ガラス産業は、燃料や主原料(珪砂、ソーダ灰など)を輸入に依存しているため調達コストが総じて高く、また、一部の資源では地域偏在性がみられるため、中長期的観点からその安定確保も課題となってくる。
また、素材産業全般に共通する弱みとも考えられるが、市場に対し最終製品を供給している訳ではないため、川下産業を取り巻く経済環境の急速な変化に大きく左右され、最終製品の需要動向や納入先事業者の業況などの影響を大きく受ける。加えて、今後も成長が期待されるフラットパネルディスプレイなどについて、新興国を中心として海外で新規工場の建設計画が多く、今後こうした完成品メーカーの動向への対応が課題となってくる。
3、世界市場の展望
板ガラス産業は、品質向上や高機能化のため、次々と新商品を生み出し市場を発展させてきた。
今後の市場を展望すると、国内需要は建築需要の減少により需要の大きな伸びは期待できないものの、BRICsやアジア地域など新興国では需要の拡大が見込まれている。
また、地球環境問題やエネルギー問題に対する市場意識の高まりから、太陽電池用ガラスや複層ガラスの需要の伸びが見込まれる。さらに、安全・安心に対する市場意識の高まりから、防犯ガラス、防災ガラスの需要の伸びが見込まれている。
機能性ガラスのうちディスプレイ関連については、今後もフラットパネルディスプレイ市場の拡大に伴いガラス基板の需要の増加が見込まれる。その他の機能性ガラスについても、需要の変動はあるものの、すう勢としては着実に需要が拡大していくものと予想される。
4、我が国産業の展望と課題
(1)今後の競争力強化に向けた対応
今後、我が国板ガラス産業が競争力を維持するためには、規模の経済を活かしながら引き続き国際的な事業活動を行っていく必要があり、そのためのグローバル人材の確保・育成が重要である。
また、市場ニーズを先取りした高機能・高付加価値製品の提供を進めるとともに、これを可能とする一段と高度な技術開発力・生産技術力を確保することが重要である。
国内のみならず国際的な連携を含め研究開発の取組を一層強化し、ガラスの組成設計技術、表面処理技術、複合化技術、精密加工技術などで優位性を確保していくことが期待される。
(2)グローバル戦略
今後、板ガラス産業においては、新たな需要が期待されるBRICsなど新興国への展開と、近年世界的に拡大しつつある太陽光発電市場向け需要が見込まれている。
近年の景気悪化局面においても、我が国ガラスメーカー各社とも太陽電池用ガラスを今後の成長分野と見込み、生産能力増強のための設備投資や、発電効率を向上させることができる高機能・高品質な製品を生産するための設備投資を積極的に進める計画を発表している。