今年は落雷件数が7月に100万件を超えた。雷発生は8月をピークに漸減するが、落雷の件数は増える一方である。工場やビルでは、落雷による被害額が膨大になっている。特に、自動火災警報器、中央監視制御盤、通信設備、計装設備、照明設備などが被害を受けており、受配電盤類による誘導雷対策がますます重要になってきている。
近年、工場では生産設備と情報通信ネットワークが緊密に連携しており、設備の故障やデータの損失につながる誘導雷の影響排除は喫緊の課題である。
被害額は鉄鋼産業や化学産業で数千万円から数億円に上るといわれ、印刷、機械加工、ソフト開発など他の業種でも数百万円の損失と想定されている。
太陽光発電、風力発電の設置が増加しているが、これらにも誘導雷対策が必要である。風力発電の故障・事故発生要因の20%以上が落雷である。
落雷対策として、外部雷保護システム、内部雷保護システムがあるが、受配電盤は内部保護としての役割を担い、SPD搭載の比重が高まっている。
NEDOの高圧受電設備並びに低圧幹線系統の雷による設備損傷の抑制対策調査研究報告によると、SPDの取り付け場所は次のようになっている。
▽電力引込線=電気室・受電柱▽外構用低圧配線=配電盤▽通信線用外線引込=MDFなど▽吸水引込管・ガス引込管・配水管=主接地端子盤▽屋上の機器の保護=電灯盤・動力盤・弱電機器盤▽低圧幹線系統の保護=配電盤▽分岐回路保護=分電盤▽重要施設保護=動力盤・電灯盤▽機器単体の保護=制御盤など機器直近などとなっており、受配電盤の雷対策に対する役割は大きい。
受配電盤・制御システム盤へのSPD内蔵は必須条件になっているといえる。
それだけに、配電制御システム各社は、盤内へのSPD取り付けを積極的に推奨できる立場にある。
建築基準法、消防法の関連法規では、高さ20メートルを超える建物、指定数量の10倍以上の危険物を取り扱う製造所、屋内貯蔵所及び屋外タンク貯蔵所などには雷保護システムの設置を義務付けているが、規制対象外の大きさの製造業、ビルなどにも雷保護システムの導入は、今後さらに進むものと見られる。配電制御システム各社はSPD内蔵で配電盤類の付加価値の向上につながる。また、既設へのSPD取り付けは設備の更新につなげる機会にもなる。