2008年秋のリーマンショック後の経済低迷から脱すべく、官民挙げた取り組みが行われているが、とりわけ日本経済を支える製造業はさまざまな課題を抱えている。中でも、時代の変化に対応していかなければならない技術的課題が新たに出ており、その解決には業界における強力な推進力を持った機関が必要といえる。
現在、産業界が抱える課題としては、(1)自然エネルギー発電の導入・貯蓄管理・統括安定供給の実現(2)スマートグリッド/グリーングリッド/マイクログリッドの導入の具現化課題(3)工場の発電機能とエネルギー利活用における課題(4)PLM、SCMなどの統括生産管理の実現による市場変化に対応した調達・生産・供給・破棄(5)電気自動車・3D―TV/PC/モバイル(6)ロボット導入範囲の拡大によるロボットとの共同生活・共同作業(7)製品安定供給の維持活動(8)品質保証のためのバリデーション活動(9)作業現場の安全・安心(10)より悪質になっているハザード対策のセキュリティ―などが挙げられ、ものづくりの根幹とそれを取り巻く環境が急激に変化している。
これらの課題は、今まで以上に高度で人と装置、制御と情報、技術開発と生産技術、ノウハウや技能の構築と利用と継承なども進化しており、企業内の技術開発だけでなく、国際技術標準化の内容も新しい時代に合ったものにしていくことが求められている。
IAFでは、各業界のユーザーが中心となって、その時代時代に合ったビジョンを掲げ、それを実現するのに必要な手立てを、ユーザー、ベンダ、システム・インテグレーターのエンジニアが相談し、国際標準化団体への働きかけをしていく機関の役割を担おうというもの。
従来、こうした活動のためにMSTCが03年にIA懇談会を設置し、意見交換の場を提供してきた。これにはEtherCAT
Technology
Group、FAオープン推進協議会、FDT
Group日本支部、M2Mコンソーシアム、ODVA日本支部、ORiN協議会、CiA
Marketing
Group
Japan、CC―Link協会、製造業XML推進協議会、日本AS―i協会、日本OPC協議会、JEMAネットワーク推進特別委員会、日本フィールドバス協会、日本プロフィバス協会、PLCopen
Japan、MECHATROLINK協会、ものづくりAPS推進機構などの20近い標準化団体が参加し、活動を紹介する「MOF(Manufacturing・Open・Forum)」を、04年から隔年で開催している。
また、これと並行して、設立されたMfgXは、製造業におけるXML活用を旗印に、ユーザー主導で設置された製造業文書連携プロジェクトFAOPと、APSOMと連携したMESXプロジェクトの2つを推進してきた。
しかしながら、汎用品であるマイクロソフトのOfficeがXMLベースに改変され、また情報系もクラウド・コンピューティングという形でXMLデータの交換が当たり前になってきたことなども今回の組織の一本化に繋がっている。
IAFでは今後、ユーザーを中心とした産学官にわたる定期的なIAサミットを企画実施し、製造業を中心とした産業界における時代の変化に適合したユーザビジョンのイメージを作り上げるとともに、ユーザ・システムインテグレータ・機器ベンダー・ソフトウェアーベンダが関連情報を入手・交換し、協働してニーズの定義・相互評価・技術開発のできる場として、情報交換会・研究会等を企画・実施することを計画している。
具体的には(1)IAにおけるクラウド技術検討プロジェクト(2)文書連携プロジェクト=文書連携・システム連携によるノウハウ利活用技術や3D―CAD/シミュレーション利活用技術、PLM/SCM連携技術の開発(3)組込み・IA連携プロジェクト=アンドロイドなどの汎用情報端末プラットフォームの利用とWebサービスによるリモートサービス利用技術のIA応用(4)製品安定供給技術プロジェクト(5)製造プロセスのバリデーション、作業現場の安全・安心、セキュリティなどを確保する技術。
なお、発足に向けた準備委員会をMSTC内に設置している。