新たな展開を見せる防爆機器市場 進む石油化学プラントのリニューアル 大電流対応へ新防爆技術を提案期待高まる海外のエネルギー開拓向け需要

防爆関連機器市場は、石油化学プラント・施設などを中心にリニューアルが進み、安全対策の強化へ盛り上がりを見せている。また、規制の緩和などの法改正や、新しい概念の防爆技術も提案されている。市場規模もバリアリレーや、防爆パソコン、防爆タッチパネル、防爆バーコードリーダーなど各種センサー、回転灯などの制御機器で50億円前後と推定される。ユーザーも高圧ガスを取り扱う事業所での事故件数の増加に伴い、改めて防爆関連機器に対する関心が高まっている。海外では、ロシアや中国、東南アジア地区を中心に市場が拡大している。製品展開では、海外の防爆規格や各種の防塵防爆規格に対応した製品が数多く登場しており、グローバルでの市場展開が加速している。防爆関連機器を必要とする危険個所は、石油製品生産工場、石油精製プラント、トンネル掘削工事現場、原油基地、LNG基地、塗装工場、火力発電所、石油・天然ガスなどの備蓄・貯蔵場所をはじめ、一般の工場でも食品や半導体、精密機器、医薬関連などでは対策が求められている。

2008年3月に改正された労働安全衛生法では「爆発のある濃度に達するおそれに」という文言が追加され、危険物や可燃性物質、高圧ガスなどを取り扱う事業所は、先に挙げた大規模な事業所から、半導体製造工場や燃料電池関連などの先端事業所、ガソリンスタンド、LNG・LPG充填所、塗装作業所、さらに有機溶剤の取扱所など小規模なものまで対象となった。

この法改正により危険場所の区分が法的にも義務付けられ、既存のプラントでも法改正の影響を受けることになった。

このような危険個所では、爆発事故などを防ぐため電子・電気機器を隔離しなければならない。例えば、危険個所では石油などは常温でも気化し、その蒸気や温度によってはスイッチなどの開閉に伴う微小の電気火花や静電気による火花でも引火や爆発する恐れがある。LPGなどのガスでも大気中に漏れ、空気と混ざることによって同様の危険性がある。

最近は危険個所の工場・設備でも電子機器や制御機器の使用が増加し、これらが原因となって火災や爆発が起こるケースも少なくない。特にここ数年は、設備の老朽化や熟練の保守点検要員の退職といった理由から、高圧ガスの製造事業所での事故件数が急激に増加しており、電子・電気機器の防爆対策に対するニーズが急速に高まっている。高圧ガス製造事業所以外でも、大規模工場の爆発事故や火災などにより、改めて防爆製品に対する関心と需要が高まっている。このうち特に、耐圧防爆構造、本質安全防爆機器の動きが顕著だ。半導体製造関連分野、有機溶剤を取り扱う自動車塗装関連分野などでは、本質安全防爆機器の採用が広がっている。さらに、新たな市場として半導体製造関連分野のほか、食品業界や薬品業界といった業界にも防爆関連機器採用の動きが活発化している。

防爆製品は非常に多岐にわたるが、大きくFA制御機器分野、モータ分野、照明分野、計測機器分野の4つに分かれるが、コントロールボックス、バリアリレー、タッチパネル表示器、リミットスイッチ、回転灯、バーコードリーダー、ソケット、パソコンなどのFA制御機器分野での市場規模は50億円前後と見られている。これらは主に日本電気制御機器工業会(NECA)の会員メーカーが多いが、これ以外ではモータなどの日本電機工業会(JEMA)、測定器などの日本電気計測器工業会(JEMIMA)、照明器具などの日本照明器具工業会(JLA)なども関係しており、これらの工業会は防爆安全で連携した活動を行っている。08年10月から施行された電気機械器具防爆構造規格の改正では、検定済み防爆製品の継続製造・更新について厚生労働省に働きかけ成果を生み出している。

主な防爆対策としては、「耐圧防爆」「内圧防爆」「安全増防爆構造」「本質安全防爆」「油入り防爆構造」がある。

「耐圧防爆」は着火源を頑丈な箱で被い、電気火花により着火した火炎や高温ガスを箱の外に出さない方法で、内部で点火爆発しても外部に悪影響を与えない構造となっている。容器は内部の爆発圧力に耐え、周囲の爆発性ガスへの火炎逸走を防止する性能を持たなければならない。光電スイッチ、バーコードリーダー、プログラマブル表示器、電子天びんなどで採用されている。

「内圧防爆」は箱内にきれいな空気などを封入し、内部の圧力を外部より高く設定することで、外部からの危険ガス侵入を防ぐ構造。内部圧力の保持方法によって、給気口や排気口を設ける通風式と、密閉する封入式がある。操作盤など大型の電気機器で採用されている。

「安全増防爆構造」は正常な運転中、操作の際に点火源を持たない電気機器(巻線、接続端子など)に限定して適用できるもので、接点開閉部、高温発生部などのある電気機器は、この構造を採用できない。一般的に点火源を持たない電気機器が点火源となりにくいように安全度を増加させ、断線、絶縁不良などの故障が起こりにくいようにしたもの。

「本質安全防爆」は、あらかじめ電気火花エネルギーを点火エネルギー以下になるようにシステム構築する方法。その電気火花は、爆発性ガスに対する最小点火エネルギーの50%以下に設計されている。この構造は、必要に応じ各種安全素子を活用し、安全回路自体に防爆性を持たせている。接点信号変換器、表示灯、ブザー、近接スイッチなどで採用されている。最近は、コスト面からフィールドバス用のバリアより本質安全防爆構造の機器を使うケースが増えてきている。

「油入り防爆構造」は、火花やアーク、高温度を絶縁油の中に深く沈めて爆発性ガスが点火源となる恐れのある部分に触れないように隔離したもので、内圧防爆構造と同じような性格を持つ。

また、「バリアリレー」は本質安全防爆構造の一種のリレー中継装置で、危険場所にあるリミットスイッチや押ボタンスイッチなどのON/OFF信号を非危険場所へ中継させる。爆発性ガス雰囲気の中で汎用のリミットスイッチや押ボタンスイッチが使え、危険場所に配線する本質安全回路の断線・短絡・地絡や非本質安全防爆回路のトラブルの波及など、あらゆるトラブルが生じても安全性を確保する。光電スイッチやブザー、ランプが使えるバリアも製品化されている。

最近では、国内防爆検定取得と機械安全規格認証を受け、防爆安全と機械安全の両方を満たした「防爆機械安全」というセーフティリレーバリアが登場し、新しい需要を形成している。機械安全と防爆安全が確保されたシステムで、爆発性雰囲気内での安全システム構築に対応する。例えば、このリレーバリアに非常停止用押ボタンスイッチや安全スイッチなどの安全入力機器と、安全規格に適合したコンタクタを接続することで、防爆安全と機械安全の双方が実現できる。

防爆製品についての規格は、現在大きく分けて2つが存在する。1つは71年から国内で運用されている「電気機械器具防爆構造規格」であり、もう1つは88年から運用されている国際規格のIECである。電気機械器具防爆構造規格については、国際電気標準会議が制定した国際規格(IEC規格)との整合化を図り、昨年3月に一部を改正、同年10月から施行・適用されている。「労働安全衛生規則」も同じ時期に一部が改正され、「機械等検定規則」も昨年9月に改正された。

電気機械器具防爆構造規格の改正内容は、第1条に「樹脂充填防爆構造」「非点火防爆構造」が追加、第2条に「特別危険個所」「第1類危険個所」「第2類危険個所」の区分が設けられ、これらに応じた防爆構造が規定された。

労働安全衛生規則は第280条に「爆発の危険のある濃度に達するおそれに応じた」が追加され、危険場所の区分が義務付けられた。機械等検定規則は、第8条に樹脂充填防爆構造のための熱安定性試験設備、非点火防爆構造のための衝撃試験設備の保有が規定された。これらの法改正により、危険場所の区分など従来は大雑把で自主規制の範囲内であった部分が法律化され、危険度やリスクに応じた対応ができるようになるとともに、規制緩和がなされ一般の電子装置も防爆の個所で使用できるようになった。

海外向け需要に対応するためIEC規格も重視されている。欧州や米国では、独自の規格(指令)があり、欧州ではATEX、米国ではFM、カナダではCSA、ロシアではGOST(ゴスト)、さらに中国ではNEPSIなどが代表的で、各メーカーでは順次こうした各国の規格を取得し、製品輸出に対応している。

03年からCEマーキング適合指令の1つとして、ATEX指令が強制施行された。防爆機器をEU加盟国域内で、製造、販売、流通、設置する場合、CENELEC防爆規格適合品であっても、ATEX指令にも適合する必要がある。

ATEX指令の認証は、可燃性ガス・蒸気と可燃性粉塵の2つに大きく分けられている。

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