通信のワイヤレス化も進展

最近では、IECが防爆電気機器に関する各国の規格・検定制度の相違に起因する障害を排し、国際間の交易を促進することを目的とした国際認証制度「IECExシステム」が注目されている。共通の防爆構造規格、共通の適合証、共通の適合マークを参加各国が認める制度を導入することで、一定レベルの安全性を確保し各国の多重検定をできるだけ排除し、国際間の流通を促進しようとする制度である。

現在、英国、米国など欧米各国のほか、中国、韓国など20数カ国が参加、日本も06年に同スキームに加盟したが、システムに対する国内の状況が整っておらず、登録はされていない。防爆に対する海外の考えが日本に入り、規制緩和が進むという良い部分もあるが、国内の防爆に関する現状は、規格と規制の二重構造になっており、この2点を整合するのにもう少し時間がかかりそうだ。

また、規格面では、防爆雰囲気内での金属性、炭素系、有機質可燃性粉塵量を規定するNEMA規格などに適合する製品も数多く発売されている。

危険場所の区分(分類)については、厚生労働省の改正告示では「可燃性物質の特性、爆発に至る過程及び電気機械器具に関する知識を持つ者が、安全、電気、機械その他の関係技術者と適宜協議の上、実施すること」と記述されている。

危険場所で最もリスクの高いゾーン0「特別危険個所」の定義は「爆発性雰囲気が通常の状態において連続して、または長時間にわたって、もしくは頻繁に存在する場所」。これは可燃性物質を連続、長時間もしくは高頻度で放出する放出源の周辺に通常形成される。大気に開放された可燃性液体の表面や、爆発性ガスを頻繁に長時間放出する開放されたベント、その他開口部が該当する。

ゾーン1「第1類危険個所」の定義は「通常の状態において、爆発性雰囲気をしばしば生成する可能性がある場所」。通常の状態で定期的に、または時々放出することが予想される放出源の周辺に形成されるが、通常の状態で可燃性物質を放出することが予測されるコンプレッサ、バルブなどのシール部、リリーフバルブ、ベント、そのほかの開口部、試料採集個所が該当する。

ゾーン2「第2類危険個所」の定義は「通常の状態において、爆発性雰囲気を生成する可能性が小さく、また生成した場合でも短時間しか持続しない場所」。通常の状態では放出することが予測されず、もし放出しても稀で、しかも短時間しか放出しない放出源の周辺が対象。ポンプ、コンプレッサ及びバルブのシール、フランジ、継手及び配管付属品など、プロセス機器などの通常の状態においても放出が起きることが予測されない部分が該当する。

こうした市場変化と技術進歩の中で、新たな防爆技術も提案されている。「DART」というこの防爆技術は、電気回路全体をモニターできるインテリジェントな検出回路を使うことで、危険なスパークなどを検出すると、その電源をマイクロ秒以内でOFFにし、スパークが誘引されて爆発などが起きないように防御する。今まで大容量な電源が必要な機器を危険場所で使用するには制約が多かったが、この制約が解消されるほか、接続できる機器数の増加やケーブルも長くできるなどの利点が生まれる。

また、通信のワイヤレス化も進んでいる。「危険エリアにネットワークを」をコンセプトに、防爆型の広域アクセスポイントや指向性の遠距離タイプ、無指向性のアクセスポイントを開発。こうした防爆型のアクセスポイントを活用し、無線LANによるネットワーク構築を提案する動きも出てきた。開発したメーカーではこのほか、防爆ドーム型カメラやIP電話、さらに防爆型ハブなどを開発・投入しており、無線技術の特徴であるモバイル性や、配線ケーブルの削減メリットを活かし、高度な操業やメンテナンスを支えるために安全で大容量の情報伝達手段が簡単に構築可能になる。

NECAでは、防爆電気機器の点検や保守の促進、啓発を目的とした「防爆安全カイドブック」を昨年発刊した。読みやすく分かりやすい内容で、災害防止に繋がるガイドブックとして好評を得ている。

防爆機器市場は、国内ではプラントなどのリニューアル需要と防爆対象範疇の拡大需要を中心に取り組まれており、また海外では石油や液化天然ガスなどのエネルギー開拓を中心に、需要が広がっている。

防爆技術の進歩と安全対策の強化、防爆製品の広がりなど防爆機器を取り巻く環境は、大きな変化を見せており通常の工場と同じ感覚で安全を実現できるような取り組みが進んでいる。

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