リーマンショックに端を発した世界経済の未曽有の縮小は、2008年9月から昨年初冬まで続き、現在も引きずっている。日本もまた、マイナス成長へひたすら陥って行く。暗闇の中で、企業は再び活力の源を必死に探していたが…。
そんな塞ぎ込んだ空気が世の中を支配する昨年4月、日昭無線の伊佐野勝利社長が「これでいけると思うのだが、どうだ」と記者に問いかけるようにLED照明用定電圧電源をテーブルに置いた。それから1年後、第2弾としてDCDCコンバータ定電流電源モジュールを発売、LED照明用電源分野で着々と地歩を固めつつある。
このLED照明用電源への進出を機に攻めに転じた同社では、他の取り扱う電子部品や制御機器の受注が回復し始める。鹿児島工場もプリント基板実装受託が増え、電源製造と合わせて忙しく残業が続く。「今12月期は08年を超えそう」(伊佐野社長)と言うまでに業績が回復しつつある。
起爆剤の役目を果たしたLED照明用電源は、同社が提唱する「モノづくりコラボレーション」の申し子である。
電子部品・制御機器の販売、基盤実装を両輪に事業を展開しているが、21世紀をコラボレーション時代と位置付け取り組んできた。「グローバルの視点に立ち、製造業商社はお互い得意分野に特化し、協同して産業構造の転換に対応しなければ生き残れない」との経営方針を不況下にあっても持ち続けてきた。
LED照明用電源は、そうした方針を具現化した製品である。LED照明メーカー、照明器具メーカーと同社の3社が情報を交換しながら互いの役割を担った。
同社は、2社の意見を取り入れて試作を重ねPSE規格を取得、商品化にこぎつけ昨年春に鹿児島工場で定電圧電源の本格生産に入った。
コラボレーションを組む会社への納入を行う一方、自社内にも販売プロジェクトを編成して50W、100W、150Wの標準タイプの売り込みを始めた。市場の要求で、自動調光器も開発しセット販売を行う。
定電圧電源は並列接続が可能で定電流電源に比べコスト削減、省設置スペース、配線作業の効率化が認められ、売り上げが増加。自動調光器も内蔵の照度センサーにより照明輝度を室内の明暗に応じて自動調整できるためCO2削減に貢献と評価を得ている。
市場の反応が良いことから第2弾を企画、今年春にDCDCコンバータ定電流電源モジュールを発売した。
この新製品は、入力DC5V~36V、出力350ミリAと700ミリAを用意している。複数のLEDに直に接続でき、電源の設置台数を減らせるためトータルコストの軽減が可能である。また、調光用PWM信号入力端子も設けスイッチング電源、太陽光発電や風力発電などでチャージされたバッテリーから直接LED照明に接続できる特徴を持っている。
政府は不況から抜け出す施策として成長戦略分野を掲げているが、省エネはその一端を担っている。特に、LED照明に対する期待は大きく、今後市場の急拡大が見込まれている。
同社ではLED照明ブームを追い風に、コラボレーションを加速させ3社共同開発の芽を大切に大きく育てる方針である。
伊佐野社長は「景気は現在の回復速度が続くとは思えない。欧米の景気対策、中国の景気動向、為替など懸念される材料が多く、来年は不透明だ」と見通しながら、LED照明用電源については全社の重点拡販商品として取り組むという。また、新商材として活用して欲しいと同業の商社にも一緒に販売することを呼びかける。異業種企業とのコラボレーションから生まれたLED照明用電源はシリーズが充実し、LED市場拡大の気流に乗りつつある。
なお、LED照明用電源の問い合わせは同社(東京都千代田区外神田2―13―1、Tel03―3255―6693)まで。