Faセンサー市場は、国内市場の需要回復と中国を中心とした海外市場の成長を背景に昨年秋以降、V字回復を見せている。日本電気制御機器工業会(NECA)の検出用スイッチの出荷統計では、2009年度は前年比14・2%減の824億円であったが、10年度の第1四半期(4~6月)は同93・8%増の284億円となり、急激な回復を示している。国内市場は半導体関連や自動車関連、さらに電子部品関連の設備投資が活発化したことが大きな需要回復の要因となった。しかし、5月以降円高が急速に進行していることから、今後、輸出関連に影響が出てくることが予想されるほか、自動車のエコカーポイント制度が終了するなど、若干の懸念材料も出てきた。一方、輸出は依然として好調で、特に中国を中心としたアジア地区での市場拡大傾向が顕著である。今後は、MEMS技術搭載のセンサーや、太陽光発電システムや新エネルギー分野における市場の拡大、さらに安全・防犯分野などFA分野以外でのアプリケーション拡大などに期待がかかる。Faセンサー市場は、半導体製造装置市場、自動車関連市場、電子部品関連市場の活発な動きを背景に、昨年の第1四半期(4~6月)を底に順調に回復している。NECAの検出用スイッチの出荷統計では、09年度第2四半期は188億円(前期比28・5%増)、同第3四半期は235億円(同24・8%増)となり前年同期を0・7%上回った。同第4四半期は252億円で前期比7・2%増・前年比66・8%増となり、年間では824億円前年比142%減となった。
10年度に入っても順調に回復しており、第1四半期は284億円で前期比12・8%増、前年比は93・8%増となっており、V字回復を示している。NECAでは、電気制御機器全体の出荷額を上期は前年同期比46・1%増の2790億円、通期で同26・9%増の5700億円と予測しており、仮に現在の出荷ベースが維持されれば上期3000億円、通期で6000億円台乗せが確実となる勢いである。ただし、5月以降の急激な円高の進行が輸出環境を大きく圧迫、さらに自動車のエコカーポイント制度も終了することから、業界内では「下期の見通しは不透明」という意見が出てきている。
個々の市場の動きでは、昨年秋から自動車関連、半導体製造装置関連、さらに電子部品関連での設備投資が旺盛なほか、工作機械も大きく回復しており、FAセンサーの需要回復に大きく貢献している。
日本自動車工業会による今年7月の四輪車生産台数は86万台で、前年同月比16・8%の増加と9カ月連続で前年同月を上回っている。1~7月の全四輪車の生産累計は、570万8712台で前年同期40・5%の増加となっており、内訳は乗用車493万4579台で同41・2%増加、トラック70万9425台で同35・1%増加、バス6万4708台で同44・7%の増加でいずれも大きく伸長している。
半導体製造装置関連は、日本半導体製造装置協会による日本製同装置の受注額のBBレシオでは、昨年6月以降1以上を更新しており、今年に入ってからも1・36、1・34、1・17、1・07、1・13、1・40、1・53と高水準で推移している。
FAセンサーの大きな市場である工作機械の受注金額は、日本工作機械工業会の受注統計によると、10年8月の受注総額は858億円で前月比2・1%増・前年同月比は170・0%の増加、年間累計では6108億円で前年同期比185・1%増と大きく回復している。
一方、ロボット関連市場は、日本ロボット工業会による今年4月から6月までの出荷統計額では、前年同期比2・3倍の1121億円となり、2四半期連続でプラス成長となった。国内出荷額は、11四半期ぶりにプラスに転じおり、輸出額は、同3・0倍の868億円となり、2四半期連続でプラス成長となっている。特に、国内では電子・電気機械産業向けは、同2・1倍の125億円で、情報通信機器の販売好調を受け、電子部品実装用やFPD用(ガラス基板搬送)、半導体(ウエハ搬送)用が伸長している。
食品・医薬品・化粧品の3品業界は、依然として堅調な動きを見せており、FAセンサーの大きな市場に成長している。食品や医薬品などの製造ラインで各種の認識・識別センサーの採用が拡大しており、各センサーメーカーでもこうした分野に向け、新製品を積極的に投入している。
太陽光発電関連の動きも活発化している。全国の公立小中学校に太陽光発電の導入を図るという施策に対応するほか、電気事業連合会や日本電機工業会などの太陽光発電関連団体が、太陽光発電の普及拡大に向け積極的な活動を開始している。具体的には、国内の電力メーカーが本格的な太陽光発電所建設に動き出しているほか、各公共施設、工場、ビル、倉庫、大規模店舗、ソーラーハウスなどで太陽光発電システム導入に向けた動きが活発化しており、FAセンサー分野にも波及効果が期待できる。
FAセンサーの種類別シェアでは、NECA統計によると、光電センサーが約300億円で検出用スイッチの中で最も割合が高い。続いてマイクロスイッチが約160億円、近接センサーが約120億円、リミットスイッチが約120億円などとなっている。また、検出用スイッチの主な産業分野別需要では、半導体製造装置が約100億円で最も多く、続いて工作機械約60億円、運搬機械約50億円、ロボット約15億円、食品・包装機械約20億円となっている。
FAセンサーの代表的製品の光電センサーは、LEDや半導体レーザーを光源にした非接触センサーで、検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがある。長距離検出には透過型が最適である。回帰反射型は、透過型で必要だった投光部と受光部の配線が不要で、配線工数や設置工数を半減できるメリットがある。そのほか超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、DC電源で使え応答速度が速いアンプ内蔵型、AC電源で使え取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。
半導体や液晶製造装置では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいなどの理由から光電センサーの使用個数が増加、大きな市場を形成している。微小物体検出用では、これ以外でも小型化が進む機器の組み立て装置分野や、小型電子部品の製造装置などでも大きなニーズがある。小型化と長い検出距離、高い保護特性など進化が著しく、検出距離50メートル、保護特性IP69Kといった製品も登場している。取り付けも端子台やアタッチメントなどを使用しているものが多いが、最近は埋め込み取り付けが可能なタイプも出ており、より狭小な場所にも取り付けが可能になっている。食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出といった分野では、従来品を改良し、より精度の高い検出を実現した製品の開発が進んでいる。関連する光電センサーでは、カメラ、照明、カラーモニターを一体化したローエンドの色面積センサーなどがある。同センサーは、印字有無判別、シール有無判別、シール異種混入判別、文字認識などが容易に行える。
化粧品・薬品・飲料・食品などいわゆる3品業界では、このようにユーザーのニーズに合わせた用途限定センサー、提案解決型センサーといった専用センサーの需要が高まっている。同様に食品分野は、食品偽装問題や製品安全対策向上の観点から、トレーサビリティを念頭に置いた需要が高まっている。人間の目以上の精度で確実に検査できることは、トレーサビリティを推進する上で重要な不良品防止に繋がり、一層効果を発揮する。こうした効果への期待から、各企業で検査工程の自動化投資に意欲的に取り組むところが増えている
最近の光電センサーは、オートチューニング機能など使いやすさを追求した機能が一般化している。また、多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバー式光電スイッチなどもある。
新しい機能であるデュアル感度補正機能は、ファイバー先端が汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がないという特徴を持つ。さらにピッキング用として、使用する距離によってリフレクタ形と拡散反射形が選択できる薄型ワイドセンサも好評である。省スペースで高輝度の大形表示灯が付いており、ピッキング作業の効率化が図れる。あらゆる対象物のインライン形状計測を実現した2次元形状計測センサーも画期的である。
水検出センサーでは、検出能力向上のため、従来10mWだった出力を100mWに引き上げ、目で見ても安全なハイパワーのレーザーを搭載することで、発熱や波長の不安定さを取り除き、量子効率を上げ、不透明容器内の水、及び水を含む液体を確実に検出することができる。
近接センサーは、耐環境性が良く、高温・多湿、防爆雰囲気、水中など、他のセンサーにはない独自の特徴から、工作機械、ロボット向けなどを中心に光電センサーとは異なった市場・用途を形成している。最近では、振動や衝撃による緩みを防止できるタイプや、6ミリ角の超小型タイプも製品化されている。また、新たな動作原理の開発やオールメタルタイプも増え、検出物体の制限はより小さくなっている。これにより金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる近接センサーとして新しい市場を開拓している。
0~360度までの回転角度の位置を4~20mAのアナログ値に変換して出力できる近接センサーも発売されている。バルブの開閉状況確認など、従来はポテンショメーターなどを使用していた用途でも、高周波を使った分解能0・4度の非接触式の検出による特徴から、今後の需要拡大が期待されている。
最近では超音波を利用し、液晶のフィルム基板や透明シートのエッジ検出を行うエッジセンサも開発され、アプリケーションが拡大している。
安全対策用センサーは、安全重視の思想が国際的に広がる中で需要が拡大している。さらに防犯対策の高まりから、各種の防犯用センサーも伸長している。安全センサーの応用製品では、外部ハウジングにテープスイッチを内蔵したセーフティエッジセンサーが、エレベーター、車両、住宅ドア、高速シャッタードアといった自動ドアや、各種機械類の挟まれ防止、医療機器などの非常停止、無人車両などの衝突感知センサーとして採用が増えている。
ロータリーエンコーダーは、回転角変位をデジタル量に変換するセンサーで、工作機械、加工機械、ロボット、半導体製造装置、検査装置などのセットメーカーのほか、自動車関連、電気・電子、機械・精密の生産ライン向けも堅調に推移しており、車載関連や建設機械、防爆関連、介護用ロボットなど新規需要も拡大している。圧力センサーは、小型・軽量化、使い勝手の良さ、低価格化、耐環境性や温度特性の向上などの改良が進んでいる。ミストを含んだ空気、水、油など、流体や環境を選ばないハイエンド圧力センサーなども登場し多分野で採用されている。産業用途での主な需要先では、プロセス制御や工業計測などの分野があり、圧力で制御したり、圧力を計測するといった基本機能を中心とした使い方が多い。
新規市場では、半導体抵抗素子や静電容量素子を用いた電子式圧力センサーの需要が拡大している。
レベルセンサーは、液面や粉体面のレベルが設定レベルになった時に信号を出力するセンサーで、一般的にタンクや容器内の内容物のレベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測定、下水や排水の液面測定などにも利用される。最近では河川の水位・水量測定で、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われており、そこではレベルセンサーが重要な働きをしている。
自動車などのオイル系統の管理に採用されているほか、外食産業用にも採用され、新規市場への浸透が進んでいる。ユニークなのは、レベルセンサーに温度センサーを内蔵して一体化することで、スペースの削減とトータルコストの低減を実現したものも注目されている。
流量センサーは、高温液体を使用する金型温調器の流量管理、冷却水を使用するダイカスト金型や、焼き入れ装置のコイル冷却水の流量管理、ビンの洗浄に使用される精製水の供給管理、純水や薬液を使用するウエハ洗浄液、基板洗浄液の供給管理の分野で活躍している。流量センサーの検出方式は、羽根車式が一般的であるが、最近では電磁式のデジタル流量センサーが登場し注目を集めている。
半導体や液晶の製造工程分野では、基板などますます大型化するガラス素材の表面コーティング斑(むら)を、確実に検査するニューロ視覚センサーが登場している。ガラス自体のたるみやラインの振動に負けずに確実な検査が行えるセンサーシステムで、ハイエンドながら大型化する基板に対応するセンサーとして、期待されている。
ロボット関連では、知能ロボット向けに「小型・軽量・省電力」というテーマを満たす測域センサーの開発が進んでいる。測域センサーは、周囲の障害物などの状況を把握するセンサーで、知能ロボットには必要欠くべからざるセンサー。レーザー光線で対象物までの距離を測定し、270度の視野に対して自分を中心とした平面地図のような測域情報を得ることができる。同センサーは、長距離で高感度の検出が可能なので、最近では立体駐車場での車両のはみ出し検出や、トンネル前における車両の高さ検出など、様々な分野で用途が拡大している。
ロボットアームなどを中心に動き続ける運動体の角度や角速度が容易に検出できるジャイロセンサ内蔵のスイングセンサーなども発売されている。チャタリング防止や僅かな立ち上がりの検出なども可能である。そのほか、FAセンサーの堅調な市場として物流業界が挙げられる。物流業界はFA分野と非FA分野両方の領域を兼ね備えており、バーコードリーダーやRFIDなど、自動認識関連のFAセンサー需要が拡大している。
非FA分野では、有料道路のETCや、鉄道などICカードを採り入れた自動改札システム、さらに、各種防犯設備などで市場が拡大している。特に、各種の赤外線を使った人体検出センサーは防犯効果が高く伸長が著しい。
今後は、MEMS技術を応用したセンサーなどに期待が集まるが、最近では、製造ラインやエアコンなどの機器、さらに自動車などから発生する音や振動エネルギーの異常振動を察知し、不良品の検出や予知保全に応用するシステムが開発されており、FAセンサーの用途はますます拡大している。