産業技術総合研究所(産総研)は、情報通信研究機構(NICT)、NHK放送技術研究所(NHK技研)や企業5社の協力を得て、高精細映像などの巨大情報を低消費電力で配信できる新しいネットワークの相互接続の合同実験に成功した。
高精細映像のネットワーク伝送は、遠隔医療やテレビ会議、高臨場感が体感できるスポーツ・映画などへ応用されるほか、豊かな生活を実現するためのイノベーション創出に繋がるものとして期待されている。
一方、高精細映像のネットワーク伝送は、ネットワークの大容量化が必要となり、これに伴う消費エネルギーの増大が問題となっている。特に、現在のインターネットのルーターは、情報量に比例して消費電力が増大する。
大情報量の映像関連サービスを快適に実現するには、新たなネットワーク技術の創出が不可欠で、これまで国内では新世代ネットワーク推進フォーラムや、グリーンIT推進協議会などが検討を進めてきた。また、海外では国際コンソーシアム「グリーンタッチ」などが新しいネットワーク創出の検討を始めている。
産総研では、開発に先立ち、先端融合領域イノベーション創出拠点の形成プログラムに基づき、「光ネットワーク超低エネルギー化技術拠点」を設置し、映像の超低消費電力ネットワーク実現のための研究を重ねてきた。
一方、NICTは新世代ネットワーク研究の構想のもと「光パケット・光パス統合ネットワーク」技術の開発を行ってきた。これにNTT、富士通研究所、古河電気工業、トリマティス、日本電気の5社が参加し、共同実験の実現に取り組んできた。
今回、産総研などが開発に成功した技術は、光パスネットワーク上の経路を切り替える小型光スイッチや、これに伴う光信号の劣化に対する補償技術、さらに経路と配信サーバの統合的な資源管理技術である。
これらの技術を応用すれば、スーパーハイビジョンなどの高精細映像を従来技術に比べ、大幅に低い消費電力で配信することができる。さらに、光パケット、光パス統合ネットワークを実際に近い環境で構築し、ユーザーの利用形態に合わせたネットワークの柔軟な運用と、省電力化を図ることができる。
今回の実験は、JGN2plusテストベッドを用い、それぞれが開発してきたネットワークを相互接続したもので、実験には、NEDOプロジェクト「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」でNHK技研が開発しているスーパーハイビジョン(SHV)の送受技術も導入している。
現在のネットワークの消費電力・通信容量など、それぞれの限界を超える新しいネットワークを構築する上で、それぞれの技術が適材適所の要素技術として期待されている。さらに、新しい世代のネットワークを日本の企業・団体全体で構想し、構築していくものとして期待される。
産総研では、今後も引き続き、光パケット・光パス統合ネットワークの要素技術の開発・高度化を進め、貢献することを目指していく。