地球温暖化防止に向けて、二酸化炭素(CO2)の排出削減など企業の省エネ化への取り組みが強まっている。しかし、従来の省エネ化はどちらかと言えば、企業としての社会的責任感や義務感で取り組まれている面も強く、コストアップを危惧する声も聞かれる。三菱電機は、FA機器の総合メーカーとして生産設備分野から建屋・受配電分野まで幅広い製品群をそろえているが、これらで培ったノウハウを基にして、工場内のエネルギーコントロールに積極的に取り組むほど生産性が向上し、企業の利益向上にも繋がる省エネ提案活動を推進しようとしている。すでに、同社の名古屋製作所や福山製作所でその効果を実証しており、工場(生産設備)に対するエネルギーソリューションとして、日本の製造業を支援していく方針だ。環境省の調べによると、2006年度における日本のCO2排出量のうち、11%が製造業(工場)が使用する電力から発生している。このうち、生産設備からの発生が72%と全体の約3分の2近くを占めており、工場のエネルギー消費の効率化には、生産設備の省エネ化対策が必須であることを示している。ただ、実際にはどうしたらエネルギー消費の効率化に繋がるのか分からない企業が多いのも実状。
その一方で、日本の製造業はグローバル競争に打ち勝つために、さらなる生産性の向上と綿密な原価計算によるコスト削減の強化が求められている。
同社では、こうした課題解決には“エネルギー・ジャスト・イン・タイム"の発想がカギになると見て、生産設備単位ごとにきめ細かなエネルギー管理を行うことが重要と判断、従来から展開している「e―F@ctory」提案に、エネルギー視点の発想を加えた「e&eco―F@ctory」構想で、工場の儲かる省エネ提案を行うことにした。
生産設備分野の「制御技術(シーケンサ)」と受配電分野での「計測技術」を融合して、製造現場の見える化による生産性向上と品質向上を図るe―F@ctoryに、生産設備単位できめ細かな使用エネルギーの見える化を実現して、「生産性向上とコスト削減」を同時に実現するのがe&eco―F@ctoryである。
従来のエネルギー管理が、工場の建屋全体の日単位による生産総数管理、あるいは生産ラインごとの時間単位による製品別生産数管理であったのに対して、装置ごとの生産を秒単位に管理することで、個々の生産品ごとの生産と電力管理といった、よりきめ細かなエネルギーの見える化を実現できる。
こうした活動の成果として、同社の名古屋製作所では生産活動の見える化による徹底したムダ取りで、生産性が180%アップ、リードタイムが50%短縮、品質ロスが50%削減、システム構築コストが65%削減といった効果が出ている。また福山製作所ではエネルギーの見える化によるエネルギーのジャストインタイムによって、支払い電力料金が90年比1億円削減、エネルギー生産高原単位同15・5%改善といった効果が出ている。
「生産の効率化」と「エネルギーの効率化」を同時に実現できるe&eco―F@ctoryの導入によって、省エネ化の取り組みが、相反する取り組みではなく、工場にとって二重の相乗効果をもたらす嬉しい取り組みになっている。