「JIMTOF2010(第25回日本国際工作機械見本市)」が、今月28日から11月2日までの6日間、東京ビッグサイト全館を使って開催される。隔年で開催されている同展は、世界3大工作機械展の一つとして、国際的にも注目されており、今回も世界最高水準の日本工作機械を始め、ドイツなど世界19カ国・地域からも出展する。開場時間は午前9時から午後5時。入場料は前売り1000円、当日3000円。学生無料。期間中は前回並みの15万人の来場が見込まれている。
今回の統一テーマは「モノづくり
未来を創る
夢づくり」で、最新鋭・最高級の工作機械関連製品と技術が集結する。
出展者数は814社(前回851社)4966小間(同5233小間)の規模で、東京ビッグサイトの東、西の全ホールを使用する。海外からの参加も前回より2カ国増え、76社(前回54社)291小間(274小間)と増加した。
小間数ベースの出展内訳は、工作機械が62%、工作機器が約14%、工具類が約12%、測定器類が約5%などとなっている。
また、関連行事も盛りだくさんに企画されている。基調講演(28日)、特別講演(11月2日)をはじめ、航空機産業にスポットを当てた特別セミナーが1日に行われる。また、人材確保に向けたセミナーも開かれる。さらに、「第14回国際工作機械技術者会議」が東京ビッグサイト会議棟で29、30の両日行われる。
日本の工作機械産業は、02年後半から高水準の受注が続いていたが、08年秋の世界的金融危機が引き金となり受注額が急減し、業界は未曽有の不況に見舞われた。しかし、昨年秋頃から中国をはじめとするアジア経済に牽引された工作機械受注は、最近の円高基調にもかかわらず金融危機前の約7割の水準まで改善してきている。
日本の工作機械産業は、戦後の高度経済成長のなかで、厳しいユーザーの要望に応え、品質世界一の工業製品をつくる基盤を築いてきた。この過程の中で、多機種の汎用機を量産できるメーカーから、「マザーマシン」と言われる長期間高精度を維持できる機械を作るメーカーや、最先端機器部品ができる特殊工作機械を提供するメーカーなど、幅広い層が厚く形成されており、世界中の様々なユーザーの多様なニーズに応えられる「made
in
Japan」の高い評価を得ている。
日本の製造業は、世界市場を見据えたグローバル展開が不可避で、製品の差別化、短納期、コスト削減のための新たな生産設備の導入が必要となっている。そのような顧客需要に応えるために、日本の工作機械はいまや競合に成長しつつあるアジア製品との差別化を図りながら、世界に通用する高機能機を開発することが鍵となり、今後は生産地・機種・モデルなどの多様化が進むと見られている。
近年、同時5軸制御マシニングセンタや複合加工機は年々進化しており、今回も従来の複合切削加工機に研削加工が集約されたり、小物部品を長時間自動切削可能なバー材自動供給装置や自動化ロボットの装備などで、より複雑な形状に対応できるよう制御軸数が追加された加工機の出展が見られる。
また、最近注目されているエネルギー、航空機、大型建設機械などの分野においても、部品形状の複雑化や工程簡素化に対応するため、アングルヘッド装着の5面加工門型マシニングセンタから大型同時5軸制御マシニングセンタへの移行が進んでおり、航空機産業向けではチタンなど難削材を重切削できる高トルク主軸を装備した機種や最適な加工条件を自動選択できるソフトウェアを備えた機種の展示も予定されている。
さらに、新たなステップへ進むソフトウェア多軸・複合加工機の高度化が進むなかで、これら機械の機能性能を十分に発揮させるため、より高度なソフトウェア技術も求められている。ユーザーの志向を取り入れ最適な加工プログラムを自動的に生成するための技術、多様な条件に対応してより正確なシミュレーションを行うための技術、加工条件や加工能率を最適化するための技術など、より高度なソフトウェア技術も披露される。これまで高いニーズがありながら実現されてこなかった、CADデータの活用については、実用化に向けた新技術の出現が期待されている。
一方、製造業の生産拠点が世界規模で拡大するなかで、新興国を中心とした市場においては台湾・韓国製との競争のため製品の低コスト化が進み、工作機械メーカーには従来の高付加価値機種市場と、「ボリューム・ゾーン」である低価格機市場という2つの異なる市場に対応するための商品戦略が求められている。
特に「エントリー機」と呼ばれる機能限定機の開発は従来、一世代前の機種や現存標準機をもとに基本機械構造はそのままで機械やNC仕様を下げたコストダウンモデルが主流であったが、今日では海外生産や海外部品調達を視野に入れ、基本設計からすべて見直しを行った新モデルとして誕生している。その流れは2軸~4軸制御の標準機にとどまらず、複合加工機(5軸加工機)にまで及んでいる。この「エントリー機」は、一方で価格や操作の複雑さに懸念を持つ欧米や国内のユーザーからも基本機能が維持されながら、価格が手頃なことから「Affordable(お買い得)model」として評価され引き合いが多い。
価格を重視する韓国・台湾・中国製低価格機との差別化を図るため、商品付加価値として日本が得意としてきた現地における高い補修部品在庫率、ビフォアサービス、補修バックアップ・サービスをさらに向上し、日本製ブランドの価値を高めようとしている。
放電加工機分野では、同時5軸制御小型高速マシニングセンタでも加工が難しい、幅が狭くて深い3次元形状溝加工を、3次元形状電極と多軸機能を組み合わせることで加工可能とした機械が展示される。切削加工と比べ要求精度が高く、工作物の保持が難しいとされる研削加工分野でも研削盤に複合工程化機能を持たせるため自動研削砥石交換装置と自動計測装置を装備したグラインディングセンタ(研削盤発展型・マシニングセンタ発展型)も出品される。
現在は航空機に使用されている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が、近い将来は自動車にも多く採用が見込まれていることから、CFRPを所定寸法・輪郭形状に仕上げるトリミング加工や、ボルト・ナットなど締結具の穴あけ加工が効率的にできる同時5軸制御アブレッシブ・ウオータージェット加工(AWJ)、層間剥離や表層剥離が起こりにくい工具を備えた切削加工機の展示も予定されている。そのほか、サブミクロンからナノメートルオーダーの加工精度が要求される超精密部品加工向けに、一層の精度向上に加えて、加工効率を高めた超精密加工機も展示される。
(関連特集10~18面)