LED(発光ダイオード)照明は、1990年代に青色LEDが開発されて以降、急速に進歩拡大を遂げている。現在は、局所照明を中心とした産業用から市販されている家庭用照明まで、多種多様なLED照明が開発、販売されている。産業用分野では、制御機器メーカーがオリジナリティの高いLED照明を開発・販売、独自に市場開拓することに成功しており、大きな市場に成長してきた。LED照明は、蛍光灯の約半分の低消費電力、さらに約4万時間の長寿命という優れた特徴を持つ。現在、白熱電球や蛍光灯などに比べると高価格だが、今後の技術開発でさらに低価格化が進むと予想され、蛍光灯など従来の照明器具に置き換わる照明として期待されている。
LED照明市場は野村総合研究所によると、白色LED照明は世界全体で12年に09年の約3倍の約4782億円に達すると予測。富士経済も国内のLED照明市場規模は、08年の全照明市場4494億円のうち、約3%にあたる約133億円から、12年には全照明市場4880億円の約12%にあたる約578億円に達すると予測している。
加えて、白熱電球は世界的に環境対策や省エネルギー政策の観点から使用中止が求められる傾向がある。国内では環境省と経済産業省が12年までに白熱電球の製造と販売の中止を業界に求めており、メーカー側も協力する姿勢を見せており、将来的にはほぼ廃絶される方向で進んでいる。
海外では、韓国が15年までに全照明の30%をLED照明に切り替える「15/30プロジェクト」を進めており、台湾では政府が08年からの4年間で総額20億台湾元をLED関連の研究開発支援に投資する計画が進んでいる。台湾と同様、中国、米国もLED照明の開発に政府が多額の資金援助を行っている。
日本政府は、LED照明開発に関し特に資金援助を行っていないが、産業界では関連するメーカーが自主的・積極的にLED照明の開発・販売を加速させている。特に大手照明器具メーカーでは、白熱電球や蛍光灯の代替として拡販を行っている。
07年には国際的な競争に負けないLED照明市場の拡大を目指すため、LED及びLED照明・機器メーカーなど関連する企業が集まり、NPO法人「LED照明推進協議会」(JLEDS、太田光一理事長)が設立され、活動を行っている。
一方、制御機器業界でも数年前からLED照明事業に進出するメーカーが顕著になってきた。工場やオフィスなど一般照明分野は、大手照明器具メーカーが大きなシェアを持っているので、後発の制御機器メーカーでは、独自の制御技術を活かした数々の新タイプのLED照明を開発、新規を中心とした市場に参入し、市場開拓に成功している。
例を挙げると、照明の省電力化が求められる店舗用照明、低発熱と配光特性を駆使し冷凍・冷蔵ショーケース用照明、IP67f構造で防塵・防水・防油性能に優れる産業機械の機内用照明などがある。
食品工場向けには業界で初めてIP69Kに準拠し、80度の高温高圧洗浄に耐えるタイプや、さらに国内で初めて防爆エリアの屋内外で使用できる安全増防爆形タイプ、面発光でLED特有の眩しさをカットした、目に優しいLED照明ユニットなども発売されている。そのほか、保守・交換作業が軽減できる建物内外の高所照明、消費燃料が軽減できるイカ漁などの集魚灯分野、さらに植物工場とも呼ばれる室内での植物育成分野などがある。特に植物の育成にはLEDの単波長特性が適しているとされており、今後の市場拡大が期待できる。
将来的には、自動車の車内灯やメーターランプ、紫外線や赤外線による劣化を避けたい美術品や伝統工芸品分野、またLED照明はノイズを放射しないので医療施設や半導体工場向け、歯科治療用光硬化樹脂の照射光源、さらに商業施設などで映像表示を兼ねた「映像ライティング」も期待できる分野とされている。