日本の空がようやく国際空港の仲間入りを果たそうとしている。羽田空港が24時間体制国際空港として本格的に動き出した。国際線は成田空港、国内線は羽田空港と、空港によって運航の役割を分けられていた日本の空は、それぞれが繋がっていないため、渡航者には不便であった。渡航者にとって一番都合がいいのは、出発地と目的地が直行で繋がっていることだ。しかしながら、膨大な航空機が必要になるため、大陸が大きいアメリカが生みだした方式が「ハブアンドスポーク」といわれる運航方式であった。国内外の目的地までスムーズに繋がる乗継拠点「ハブ空港」を設けることである。従って、羽田空港のように各地方から中央に集まるだけや、成田空港のように出発点・帰国終点だけではハブ空港にはなりえなかった。
それが2011年2月末までに、国内約50都市から世界17都市へと繋がるというのだから、渡航スタイルが大いに革新されることが期待できる。地方からの渡航者にとって東京乗り継ぎは不便なため、日本各地と繋がっているソウルの仁川国際空港や上海の浦東国際空港を利用せざるを得ず、海外ハブに旅客を取られていた。
日本に落ちるべきお金が他国に落ちていたということである。日本の空の玄関は国力を表わし、国益に貢献するので、航空産業のテコ入れにより経済成長を狙えるだろうと、専門家は評価する。
しかし、国際ネットワークが広がるとは言え、増加後の発着回数は世界第23位程度で、北京首都空港には及ばない。また羽田空港はアジアの中でも東の端に位置しているのでアジア間を移動する「ハブ」には地理的に不適当であることを考えると、アジアにおいてこれといった国際競争力があるわけではない。むしろ後発で、土俵にやっと上がったに過ぎず、国家レベルでサービスを向上させていかねばならないと思う。
例えば、乗継のタイムリーさの向上、あるいはタイムリーでない旅客のための施設やサービスの提供である。海外のハブ空港は国際競争で生き残るために、設備にも工夫を凝らしている。香港空港ではターミナルのすぐ近くに9ホールのゴルフ場がある。道具は全てレンタルでき、ナイター設備で夜間プレーもできる。また、映画館やフィットネスクラブを備えた空港も海外では珍しくない。一方、日本のハブ空港施設はどうだろう。江戸の町並みのショッピングエリアや、プラネタリウムカフェ、スロットカーレーシングは、国内外の万人の渡航者に永続的に支持されるだろうか?
ビジネスマンもツーリストも、目的地までどのように快適に時間を過ごすかといったソフト面の充実が、国際空港競争の鍵を握っているといっても過言ではない。
更に、98ある日本の空港のうち地方自治体が運営しているのは55空港であり、その90%が赤字である。赤字の理由は、空港にかかるコスト高が行政の仕組みにより解消できていないこと、また何より建設時に立てた需要予測計画が大幅に甘かったためである。ただし民間運営の空港ターミナルは黒字収益であるので、国や地方自治体が運営する赤字部分と民間運営部分の経営を一つにすればいいのである。ようは民営化に運営転換、そしてLCC(格安航空会社)の積極的な誘致や旅行会社の企画サービスを導入し、羽田空港と繋げば地方の良さを活かしながら生き残れるのではないだろうか。ちなみに私は来月、後学のために、片道4000円の春秋航空の茨城―上海線に搭乗することにした。かつて航空業界にいた私は、時代は変わったなとつくづく感じる次第である。大手もベンチャーも時代のニーズに合わせないと生き残れないのはどの業界でも同じであろうし、世界とまでは言わずとも、アジアにおいてどのようなポジションを構築するか、真剣に考える時が来たと誰しも危機感を覚えるに違いない。
(シュピンドラー株式会社
代表取締役シュピンドラー千恵子)