非接触型ICカードのアプリケーションが拡大している。1枚のICカード(1つのチップ)に乗車券や電子マネー、社員証など様々な機能が搭載可能なほか、最近では携帯電話に搭載することで認証管理分野、健康医療分野、さらにデジタルサイネージソリューションまでアプリケーションが拡大している。ICカード自体も高機能化やセキュリティ強化が進むと同時に低コスト化が図られている。また活躍の場が拡大するICカードに対応するように、リーダ/ライタの新規開発も進んでいる。
非接触型ICカードとして大きな市場を持つソニーが開発した「FeliCa(フェリカ)」は、10年3月時点でICチップのグローバル出荷累計が4億4900万個を突破した。内訳はカード用ICが3億500万個、モバイルFeliCa
ICが1億4400万個となっている。特に、05年が1億個、07年が2億個、09年が4億個となっており、05年以降は2年ごとに2倍に成長している。
また、FeliCa技術を利用した電子マネーカードや、電子乗車券、サイフケータイにアクセスする装置で、搬送波を発信するリーダやライタの累計出荷台数は10年7月で1000万台を超えた。
これに呼応し、同社では4種類のプリペイド型電子マネー(Edy、Suica、nanaco、WAON)に対応し、パソコンにカードをかざすと残額などを表示する「電子マネービューワー」ウィジェットの提供を開始した。
FeliCaをはじめ、非接触型ICカードの新しいアプリケーションとして、これまでの乗車券、電子マネー、社員証といった用途以外に、物流分野や医療分野、健康分野でも拡大が見込めるほか、クレジットカードやギフトカード、電子チケット、認証・管理分野、音楽/ビデオ/ゲームなどのコンテンツサービス、郵便/DM/ポスターの広告分野など、非常に幅広い分野への応用が期待できる。
特に最近では、ICカードの大容量化、高性能化、セキュリティ強化が進み、クレジットや金融、PKI(公開鍵基盤)の分野まで製品のラインナップが拡大するという。
そのほか機能面では、通信距離の長距離化、サイズのコンパクト化、互換性などが求められるほか、一般のカードや名刺、ハガキなどに貼れるように低コスト化で手軽に発行でき、自由度の高いアンテナ形状なども求められている。
こうしたアプリケーションの拡大により、カード型ではない異形状の物に非接触型ICの採用事例が増えている。例えば、キーホルダーやペンダント、ブレスレット型、鍵型、さらに健康関連では血糖計や歩数計、飲料ボトルのキャップやミニキャラクターにまで採用が拡大している。
歩数計では、ICカードリーダにかざすだけで医療機関へ歩行データが転送され健康管理が可能なほか、血糖計はリーダにかざすだけで医療機関のパソコンに血糖値データが送信され、患者へのフィードバックに活用できている。
また、NTTドコモでは、ICカードに埋め込まれたURLや電話帳情報、メール情報などを、サイフケータイで読み取り、携帯電話の機能を連携起動させるサービスが好評なほか、凸版印刷などではサイフケータイを利用した広告ツールが注目されている。
さらに、サイフケータイとリーダ/ライタを活用すれば、店舗での顧客管理や最新情報の提供、ポイントサービスやイベントなどの利用に応用できる。サイフケータイの動画再生中にリーダにかざすと関連するサイトのURLを通知するほか、関連のCMの再生や詳細情報が取得できるなど、デジタルサイネージソリューションとしても応用でき分野を問わずICカードの可能性が拡大している。