分岐点

新潟県出身の経営者から新潟産の新米をいただいた。炊き上がった炊飯器の中を覗くと、湯気で幾重にも屈折した光りを放っており、艶のある米粒が立っている。崩れない。塩を塗して頬張ると、歯ごたえを感じる。日本の貿易自由化を拒んできたのは農業保護といわれるが、この美味さなら、外国でも高く売れる確信が持てた▼関税の壁は高い。韓国は来年7月以降、EUへの輸出品の大半で関税が撤廃される。例えば、韓国が乗用車を無税で輸出できるのに対し、日本からの場合は10%の税がかけられる。このような状態が続くなら、製造業は競争の公平化の益を得られず、ますます生産拠点を海外に移してしまう▼工場立地件数は、1989年には4000件を超えていたが、昨年は1000件を割り込み873件であった。大幅な減少は海外への工場移転も要因にある。工場立地動向から見れば、失われた20年といえる。製造業の復活は、製造業の経営環境の整備がカギを握っている気がしてならない。自由貿易協定はそのひとつである▼北海道芦別市にある北日本精機は、工業団地そのものを一括購入し、自社工場以外に多くの製造業に進出を呼びかけている。世界と取引する中小製造業が集積するモデル地区にする計画である。貿易自由化の遅れは、彼らのような日本の土地でモノづくりに励む製造業の意欲を殺(そ)ぐような気がする。もったいない話である。

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