制御機器主要各社の上期の決算が出そろった。FA・制御機器市場の急回復により、売上高・利益とも前年同期を大幅に上回った。通期でも増収増益を予想している中で、下期業績に注視している。来年度の経営戦略策定に当たり、拡大か慎重かの判断を見極める重要な期間と位置付けている。特に第4四半期については円高問題なども含め、「予想が全くつかない。その時になってみないと分からない」と指摘する企業が多く、来期計画策定は例年より遅れそう。ただ、中国市場での積極策は最優先する方向にある。
今年度上期(4~9月)は、国内では半導体・電子部品・自動車、工作機械などの設備投資回復を受け、制御機器市場もV字回復、海外では中国、タイ、マレーシアなど新興国を中心にデジタル機器、自動車向けFAシステムなどの売り上げが好調だったことで、各社とも売り上げが増加、利益も売り上げとコスト削減、固定費削減対策の効果が出て増益に転じている。
今上期の好業績は直間を含めた輸出増による。新興国の需要が伸長する一方で、欧州の市場は他地域に比べ若干遅れ気味となっているようだ。円高による為替差損で前期多額の損失を被ったメーカーも上期は、為替による損失よりも海外の回復度合いが大きく、増収増益に結びついている。
中国・韓国・東南アジアの市場は、力強い動きで安定した状態が続いたが、9月に入ってから、中国以外の地域では勢いが弱まってきており、若干の警戒感を表しているメーカーが出てきた。また、中国に生産、販売拠点を置くメーカーでは、大連や杭州などの工場でストライキなどがあったがすでに解決し、最近では落ち着いた状況になっているという。
「正直なところ中国はある種のリスクはあるものの、内需の盛り上がりはまだ数年は続くと思う。GDPも数年は10%前後の伸びを示すと予想しており、依然として魅力的な市場だ」(大手制御機器メーカー)とし、尖閣諸島問題で中国との関係がぎくしゃくしている中でも、中国市場での販売には積極策で臨む。
中国とともに経済成長が著しいインドについては「中国と異なり内需型の国なので貿易摩擦も起こり難く、近い将来、制御業界にとって魅力的な市場に成長するのは間違いない」と期待するメーカーが多い。
海外の売上高比重を高めているメーカーでは、下期も好調に業績が推移した場合、来期は内部留保から国内外市場に対し戦略投資へ転換する方針を打ち出している。具体的には、新興国市場をより深耕するほか、新興国、先進国それぞれの市場に合った新製品の開発を加速させる。
国内市場では、新規市場に期待を寄せ事業展開を始めている。新エネルギー分野、スマート・グリッドやスマート・コミュニティで事業構築していくことに照準を置き独自の制御・センシング技術で対応する製品の開拓・開発を進めるほか、市場が急拡大しているLED照明関連分野の事業拡大に注力するメーカーが増えている。
ただ、昨年前半までは業績の悪化により事業拡大にも慎重であったが、上期好調なことから、攻めへの転換は間近といわれてきた。しかし、7月から受注にかげりが出始めており、先行き懸念する声が強まっている。そのため、積極策、慎重策の両睨みで各社とも下期の世界経済、自社の業績推移に神経を集中している。下期は重要な半期になりそうである。