昨年、福岡に本拠を置く大手クリーニング業者が、建築基準法により住宅系・商業系用途地域で使用が禁じられている引火性溶剤を同地域で使用していたことが報道され問題になった。国土交通省では、この事態を受け、今年1月から8月まで実態調査を行った結果、50・2%の工場に用途規制の違反があった。この結果を受け同省では、9月10日付けで違反業者に営業継続を認める条件として、ドライクリーニング工場について電気設備に防爆措置を行うこと、溶剤を保管する部屋に換気機能を設けること、さらに引火した場合、自動停止する装置を備えるなどの防火対策の技術的助言・指導をした。関連する防爆機器メーカーは、早速この動きに呼応し、12月3日から東京ビッグサイトで開催されるクリーニング業界の総合展示会に機器を出展し、防爆機器の普及啓発と製品のPRを行う構えだ。防爆機器メーカーや関連する機械・装置メーカーでは「新たな市場が創造される」としており、今後の動向が注目される展開になってきた。
ウールや合成繊維素材は、形崩れや縮みを起こさないよう、引火性の有機溶剤で洗うドライクリーニングが行われる。引火性の有機溶剤を用いるドライクリーニング工場は、建築基準法第48条により立地規制があり、住宅系・商業系用途地域での立地が認められていない。
昨年、業界第2位の大手クリーニング業者が有機溶剤の使用を禁止されている地域で、20の同工場を稼働させていたことが報道されたことを受け、国土交通省が調査を行った結果、調査した全ドライクリーニング工場数2万8821工場のうち、用途規制の違反がないものが1万2696(44・1%)、違反があるものが1万4479(50・2%)、調査中が1646(5・7%)という結果が出た。
違反対象工場が過半数を超えていることから、同省では9月10日付けで、引火性溶剤の使用に伴う火災危険性に対する安全性を確保する基準を規定することとし、引火性溶剤の保管方法や、洗濯機・乾燥機の安全対策、作業場の防爆措置、ソフト面での安全対策などの技術的基準を打ち出した。
この中で、溶剤を保管する容器の設置場所から水平方向1メートル以内の電気設備は防爆措置を行うことや、容器が設置されている部屋に換気設備を設けること、洗濯槽内の酸素濃度を爆発濃度以下に制御する機能を付加、引火の恐れや静電気が発生する場合、機械が自動停止する機能があることなどが挙げられている。
特に、防爆に関しては危険場所の分類がIEC規格のZone1「通常作業において、ガス・蒸気爆発性雰囲気となる可能性が時折ある場所」に該当し、防爆型コンセントや防爆型換気扇などの防爆機器が対象となる。同省では、業者がこれらの是正を行う期間について、規模の小さい業者のことも考慮に入れ、合理的な猶予期間を確保することを挙げている。
こうしたことを受け、関連する防爆機器メーカーでは、12月3日から5日まで東京ビッグサイトで開催される「2010東京国際クリーニング総合展示会クリーンライフビジョン21」の、「モデル店舗ゾーン」に最新製品を出展し、クリーニング業界に向け、防爆機器の普及啓発活動と製品のPRを行う。同ゾーンは、リアル感あふれる店舗設計が体感できるほか、関連する機械メーカーも出展し、最新機器・システムを紹介するほか、来場者との相談コーナーも設置される。
今回の国の指導により、防爆機器業界や関連する機械・装置業界は「新たな市場が創造されることは確実だろう」と指摘しており、今後の動向が注目される。