工場内の通信ネットワークを、従来の制御用としての活用に加え、通信能力の高さから工場の管理用データの通信にも利用する動きが活発化している。すでにPROFIBUS&PROFINETの普及に取り組んでいる国際プロフィバス協会(PI)が、エネルギー管理プロファイル「PROFIenergy」を開発、今年4月のドイツ・ハノーバメッセで発表した。また、CC―Link協会(CLPA)も、このほど開発に取り組んでいることを明らかにしており、モーションネットワークの「SERCOS」もホワイトペーパーを公開している。工場内で使用されている生産機械・設備で、夜間など非稼働時の待機電力などの削減を、生産に影響がないようにして実現したいというニーズは高い。世界的に地球温暖化対策や省エネルギー化への取り組みが進む中で、通信ネットワークの用途がさらに広がることになる。
工場の効率的なエネルギー管理上の課題のひとつとして、工場の稼働停止時においても電力消費が減らないことがある。機械・装置によっては、電源を切った場合、再スタートに時間がかかるものや、また電源断となった場合にどのように停止するかを指定できないものがある。さらに、ただ1つの機械の電源を切れば良いのではなく、お互いに連携して動く機械では、電源を切る順番、そして電源をONする順番を考慮しなければならないこともある。工場の省エネ化への取り組みは、各方面で行われているが、複数の機器で構成されるシステムとしての省エネはあまり進んでいないのが現状だ。
PIが開発したPROFIenergyは、これらシステムの中のコントロール機器(PLCやPC)が現場機器に対して、PROFINETを介して休止、ストップ、スタートのコマンドを送った時、従来のシステムでは外部のハード機器で実現していた電源のON/OFF動作が、PROFIenergyでは現場機器内部のプログラムがネットワークを介して実行し、追加の機器を不要にしている。
また、ハード接続の場合は、単にONとOFFの選択でしかなかったが、通信のコマンドで指令を送ることで、PCなど採用されている一定時間使用を中断すると休止状態(スタンドバイモード)をつくり出せる。
休止状態では、電源の消費が抑えられるが、完全に電源断とはなっていないため、再開するときは初期状態からのスタートに比べ、早い時間で立ち上げられることになる。こうしたことが可能になるのも通信ネットワークが構築されているためで、セーフティネットワークとの併用とともに通信を活用した新たなメリットともいえる。
PROFIenergyの実用化について、PIでは10年度後半と予想しており、CLPAも今後1年ぐらいかけて開発したいとしている。
PIでは、今後のPROFIenergyのカバー領域を、工場で使用されるエネルギーとしてのガス、蒸気、圧縮空気、水なども管理できることを視野に入れて開発を進めており、また、次のバージョンとして、より使いやすいエンジニアリング方法の提供も考えている。
PROFIenergyは、ドイツの自動車業界からの要求で開発したと言われているが、自動車工場に限らず、省エネを進めていくことができるオープンな技術として、今後開発が進むものと期待されている。