混沌時代の販売情報 黒川想介 顧客にしゃべらせる方法を

制御部品やコンポーネント営業が力を入れてきた売り方は、時代とともに変遷してきた。商品PR営業時代、アプリケーション営業時代、芋づる営業時代、商品技術習得営業時代、提案営業や課題解決営業時代を過ぎ、21世紀に入ると顧客満足営業を標榜する時代になってきている。

制御部品やコンポーネント営業の見込み客は技術者である。時代の経過とともに販売員の顧客となっている技術者の技術は、より高度になってきた。そのような背景があって顧客満足営業と言えば、現在では商品技術に精通した顧客対応力と同義語のように思われている。販売する商品の勉強を徹底し、商品や周辺の技術を習得し、技術者の問い合わせに答えられることや、販売する商品のプレゼンテーションが上手になることが営業力のある販売員とされる。

そもそも顧客満足営業とは、商売の原点である販売側と顧客側との信頼関係で、つまり信用を構築する手段である。商品に関する技術対応力は、その手段の一つに過ぎない。他にも信用を勝ち取るために、販売員がやっていることがいろいろある。(1)顧客の依頼に対して素早く確実に対応すること。(2)顧客が相談しやすい技量を身につけること。商品技術のみならず業界一般の知識や情報をもつことである。(3)安請け合いをせず言ったことは必ずやること。(4)損をかけないこと。納期順守のため納期情報を入れたり、ミスをしても最小限に食い止めるために奔走したり、顧客の秘密を守ったりすることである。(5)プレサービス、その都度のサービス、アフターサービスなどのサービスを日頃から心掛けること―などの実践が日常的にやっている顧客満足営業である。

この中でも(2)顧客の相談しやすい技量に関して、特に商品の技術的知識を身につけることが、顧客満足営業だと言われているほど、現在では商品に拘っている。その理由はいくつかあると思う。(A)業界が成熟度を深めたためにメーカー間の競争が激しくなって、各メーカーは特徴づけた商品を勉強して売ってもらいたい意向が強い。(B)複雑な構造をもつ商品や電気知識がないと分からない商品が増えてきたため商品技術の習得で有利な営業ができる。©技術者が顧客であるために、日進月歩で進む技術の理解力を上げないと顧客に相手にされないという不安感がある。(D)他の顧客満足の実践は昔から行ってきているので既にできていると思っている―などが現在の顧客満足営業を目一杯商品寄りにしている理由である。

しかし、商品に関する技術の習得は、信頼関係をつくっていくための手段である。日常行っているからできるはずの他の手段は、意外とできていないものだ。

それに営業技術の習得と言えば、販売員の目には商品に関する技術的知識の習得のように映っている。しかし、商品に関する教育の印象が強ければ強いほど営業活動の弊害になってくる。

その証拠に、最近の販売員はよくしゃべる。販売員は、商品の長所やアプリケーションなどを勉強させられている。だから、商品のことをよくしゃべるのである。顧客が興味あろうがなかろうが、よくしゃべる。それしか顧客と接する玉がないか、本当に顧客に役立つと信じているのかは分からないがよくしゃべる。

本来、顧客満足営業をするためには、顧客のことを知るべきだ。知るためには、相手がしゃべってくれなければ如何ともしがたいはずだ。それなら販売員がしゃべる能力より、相手にしゃべらせる能力を身につけることが肝要ということになる。

(次回は12月22日掲載)

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