機械・装置のインタフェイスを担う操作用スイッチ市場は、2008年秋のリーマン・ショックにより大きな影響を受けたが、昨年の春頃を底に順調に伸長し、今年夏頃までV字に近い回復を示した。日本電気制御機器工業会(NECA)の統計による操作用スイッチの出荷高は、08年度は前年同期比21・7%減の338億円、09年度は上期の落ち込みが影響し、同22・2%減の263億円と2年続けてのマイナスとなったが、10年度上期は前年からの好調を持続し、同63%増の183億円となっている。
しかし、10月頃から需要の伸びが鈍化している。9月の出荷高は前月比1%の伸び、上期全体の前期比も22・4%の伸びに落ち着いてきている。昨年の回復時期からちょうど1年を経過したことによる伸び率の鈍化もあるが、スイッチメーカーの見方は「年内の受注状況はまずまずだが、円高状況や経済動向への不安要素があり、来年以降の状況はその時になってみないと分からない」とする意見が多い。
操作用スイッチの主要市場である半導体製造装置分野や電子部品実装関連分野は堅調な動きを持続しており、輸出向けでは台湾や韓国、中国向けに活発な動きを見せている。さらに、デジタル家電や情報機器向け、携帯電話、自動車電装用、セキュリティ機器、アミューズメント向けも順調に需要を伸ばしている。
社会インフラ絡みの電力関連や新エネルギー、さらに鉄道関連でも需要が伸長している。特に電力関連や発電関連の設備投資は、ここ数年増加傾向にあり操作用スイッチ需要の下支えに貢献している。また、鉄道は地球温暖化問題を背景に、環境への負荷が少ないことから世界的に見直し傾向にあり、この分野での関連需要も大きい。特に鉄道車両は、運転席周辺やドア、座席などに操作用スイッチが多数採用されている。
こうした社会インフラ関連に採用される操作用スイッチは、安全性や確実性、耐環境性などが求められることから、スイッチメーカーの技術レベルをアピールできる機会でもあり、同時に付加価値を高めた拡販も行える側面を持っている。
そのほか、高齢化社会に対応した福祉機器やセキュリティ機器にも操作用スイッチが採用されており、今後需要が伸びる市場といえるだろう。
こうした中で販売競争も激しくなっているが、特に台湾や韓国、中国などのメーカーではローコストを前面に出し、拡販営業を行っている。現在では、こうした新興国メーカーの品質も向上して徐々にシェアを上げている。日本や欧州メーカーは、需要地に近いところで生産するいわゆる「地産地消」を推進するために、例えば中国などでの現地生産比率を高めることで、為替リスクも回避し、ローカルメーカーとの競争に勝ち抜こうとしている。
操作用スイッチは、基本的に使用環境や操作頻度、取り付けスペースなどを基準に選択されるが、最近では「小型・薄型・短胴化」「デザイン性」「安全性」「LEDやEL採用による高輝度・長寿命化」「信頼性の向上」「安全対策」「保護構造の向上」などが大きなポイントになっている。
NECAでは操作用スイッチを、押しボタン、照光式押しボタン、セレクト、カム、ロータリー、トグル、デジタル、DIP、シーソー、多方向、タクティル、スライドなどに分類している。このうち照光式押しボタンスイッチと押しボタンスイッチが、操作用スイッチ全体の各18%を占め、この2つのスイッチで操作用スイッチ全体の約3分の1を占めている。さらにタクティル8%、DIPスイッチとトグルスイッチが各7%で、その他のスイッチが約2~6%となっている。