混沌時代の販売情報力 黒川想介 まず顧客に興味や関心を示す

己を知り、相手を知って戦えば百戦しても負けることはないと言ったのは孫子の兵法書である。日々営業戦線で戦っている電気部品やコンポーネント販売員も確実に成果をあげるには、同様に己を知り、相手を知らなければならない。己の力量がどのぐらいあるのか、相手のことをどのぐらい知っているのかが成果に反映するということなのだ。

己の力量とは、販売員個人だけでなく、個人の所属する会社の力量が大きくかかわってくる。相手を知るということも関係のある顧客個人だけでなく、顧客全体やもっと広く視野を広げて業界や市場を知ることにかかわってくる。

販売員が見込み客を相手に営業活動をする場合と、既に顧客となっている人を相手に営業活動をする場合ではやり方が大きく違う。見込み客を相手にする場合では、会社の力量を知ってもらうために会社案内をもって重要な一歩を踏み出す。その後は、ほとんどがカタログを広げて商品紹介となる。

日頃勉強している商品の特徴や技術的優位性を説明して相手を見る。これが電気部品やコンポーネント販売員の一般的なやり方である。その後は、相手の出方で千差万別の流れになっていく。相手の興味や必要のある場合には、販売員が勉強している商品技術が物を言う。興味や必要のない場合は、販売員の商品技術力以外の力量が物を言う。

必要や興味のある場合を想定して商品技術の勉強に余念がないが、必要や興味のあるケースはごく希である。希であるなら、商品技術力以外の力量が必要になってくる。しかし、それらの力量アップのトレーニングは、不足しているから立ち往生してしまう。これでは見込み客を相手にする己の力量が、どのぐらいあるか知っているとは言い難い。
                                                    一方、既に顧客になっている相手に営業活動をする場合には潤滑剤的な話から入る。その後用件に移り、更にアピールしたい商品の紹介を力説し、それに伴うやりとりが終わると全て終了というのが一般的なパターンである。立ち往生をせずに終わるので一応、一連の営業活動をするための己の力量があることを知っていると言えるかもしれないが、このやり方を通観すると顧客が意図的に隠している情報や無意識に隠していることを嗅ぎつける力量がないということをわかっていない。

見込み客のみならず、既に顧客になっている人を相手にする時においても、己をよく知らずに戦いを挑んでいることになる。また、見込み客に対する営業活動、顧客に対する営業活動の一般的なひな型を見ても、孫子の兵法書が言う「相手を知って」が欠落している。

見込み客の場合、ホームページなどで多少知っているのであろうが、その程度では皮相的なことしか知らないから、何度も会って知る努力をしなければならない。その後から勝つための営業活動ができるのである。また、顧客に対する営業活動の場合では、相手が提示する案件のやりとりや商品PRの際の質疑などで相手のことを知ることができるが狭い範囲しかわからない。

だから相手を熟知するには、相手に積極的に話してもらうしかない。自分が話すより相手に話してもらうには、自分のことを話題にしないで顧客の話題に持ち込むことである。商品をPRしたり、売り込もうとする前に顧客に興味や関心を示すことである。

関心を強く持てば、持つほど知りたくなる。会社、仲間、家庭など自分の所属以外の人々にあまり関心を持たなくなっている現代では、顧客に関心を持つことがいかに難しいのかを知ることから始めなければならない。

(次回は1月5・12日掲載)

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