FA・制御機器流通市場は、リーマン・ショックの後遺症を乗り越え、再び上昇基調に転じている。売り上げ、利益ともV字的に回復しているところが多く、一昨年、昨年とは状況が大きく変わっている。ただ、当面の市況は好転しているものの、先行きへの警戒感は依然強い。定着する円高基調、産業の空洞化懸念などがある。これに対抗して、海外拠点を開設する動きも強まっているが、これは一部で大半は国内市場での営業展開となる。仕入れ先メーカーも、国内市場の販売は再び商社を活用する動きを強めており、商社の存在価値がクローズアップされている。また、円高を利用した海外製品の取り扱いを強める動きも見られる。取り巻く環境が大きく変化するなかで、FA・制御機器流通は新たなチャレンジの年へスタートしている。国内のFA・制御機器流通市場の現状と3大市場の動向を探る。
FA・制御機器流通市場は、リーマン・ショックから2年が経過し、ようやく地獄から脱出しようとしている。今期は、売り上げ、利益とも大きく伸ばしている商社が目立つ。ただし、まだリーマン・ショック前の80~90%ぐらいで、ピークを超えているところはほとんどないのが現状。昨年春先の生産能力を超える受注が発生した状況からは大きく変化して、納期面での心配はほぼ解消している。むしろ関心は、この先の受注動向に移っている。
継続する円高基調、強まる工場の海外生産シフトなどで、国内のFA・制御機器流通市場が空洞化することへの警戒感を強めている。顧客の海外移転に伴い、いっしょに海外拠点を開設する商社もあるが、大半の商社は国内での販売を基本にしている。仮に海外に行っても、仕入先メーカーの販売権利を得られないと、今までの取引先以外への拡大が難しくなることや、人や資金的に対応できる体制がとれるか、中国市場では利益還元方法や売り掛けの回収の方法なども課題になり、簡単には展開できない要素も多い。
そこで、現状の国内市場での開拓に知恵を絞る動きを強めている。環境や新エネルギー、電気自動車(EV)関連需要などがテーマに挙がってきている。30年、40年前のように、今のようなFA・制御機器市場がない時代にどのような市場開拓を行ったかといった原点回帰で新市場を模索する動きができる時代になったとも言える。
ある大手商社の社長は「入社2、3年の若い社員はFA・制御機器市場に対する既成概念がないため、どんなところでも飛び込み、商材と市場を見つけてくる」と語っており、営業の視点を工場中心から少し外すことも必要になってくる。
もう一度、身の周りを見渡すことが最も重要なことかも知れない。
こうした中、国内のFA・制御機器業界そのものも変化している。国内市場の成熟化とものづくり海外シフトに伴い、FA・制御機器メーカーも国内市場から海外市場重視の姿勢を強めている。この動きが逆に、国内市場の販売は流通商社経由で行う方向に変化している。今まで、流通経由を飛ばして直販を行う中抜きや代理店数を減らす傾向を強めていたFA・制御機器メーカーが、再び代理店を増やしたりすることで、商社ルートを重視する方向に転じはじめている。FA・制御機器メーカー各社は、これから大きく市場発展が期待できる海外市場の開拓に向け、資金と人員を投入している。
FA・制御機器商社もここ10数年のこうした流れに対して危機感を持って取り組んできたことで、従来の多かった右から左へ製品を流すだけの役ではなく、メーカーの代行として、ソリューション提案やシステム開発などにも対応できるスキルを備え、変身してきた。
このところ海外メーカーも、円高基調や品質、納期、価格などをポイントに日本市場の開拓を意欲的に進めつつある。ブランド力やアフターフォローなどの面から国内のFA・制御機器商社を活用した展開を考えているところが多い。この動きは商社にとってひとつのビジネスチャンスでもある。大きな変革期は、拡大するきっかけになる。