関西地区の流通動向は、昨年春からの市場のV字回復に伴い、商社は活発な動きとなっている。秋口にかけて若干の一服感を見せたが、11月頃から再び動き出し、今年に入っても全体的にはまずまずの状況で推移している。
今年の展望も、各商社とも年度内、あるいは今年上期くらいまでの受注は確保しており、昨年一部で囁かれた二番底の懸念を指摘する声はほとんどなくなっている。ただ、長引く円高や中国を中心とする外需の動向を気にすることには変わりない。
一方、政府の景気のテコ入れ政策にも期待がかかるが、ある商社では「昨年末に打ち出した法人税の5%減税効果により、下期から設備投資が上向くのではないか」という期待感もでてきている。
こうした状況下、各商社ではリーマン・ショック以降、難局を乗り切るため独自の戦略を打ち出してきたが、その成果が確実に現れてきている。
一昨年末から市場がV字回復したことも背景にあるが、各商社とも大幅に収益を回復している。中にはリーマン・ショック前より収益が伸びたという商社もあるが、全体的にはリーマン・ショック前の90%前後まで、数字が回復してきている。
今年の各商社の戦略を見ると、現時点ではまだ今後の状況を模索している段階のところが多いが、リーマン・ショックを乗り切ったことが、「いい勉強になった」、「改めて会社の総点検をすることができた」など、これをきっかけにする良い機会になったと指摘する声も多く、新年度に向けた戦略でも、現実重視で芯の堅い方針を打ち出す商社が多いようだ。
具体的な各商社のテーマでは、ここ数年、重点として掲げている「さらなる顧客満足の徹底」「省エネ・コスト削減」「安全・安心」「環境対策」、さらに「見える化の推進」といったものが、今年も共通的に挙げられているが、顧客の海外進出に伴い、「グローバルの進展・注力」を掲げる商社も増えている。
顧客がグローバル展開することに伴い、商社も顧客が海外でのライバル企業との競争に勝ち残れるよう、品質の向上とともにコストダウンが図れるトータル・ソリューションを提案する商社が増えている。
国内の顧客に向けては、制御とメカニックの技術を融合し、そこにソフトウェアのアプリケーションを付加し、高効率で高付加価値のトータル・ソリューションを提供することで、製造業のタクトタイムを短縮し、コストダウンと省エネの両立を図るというケースも出てきている。
また、最近では環境に優しい交通手段として鉄道が見直されているが、新幹線車両を含め、新型車両の開発が活発になっていることを背景に、新規事業として新型車両の開発にかかわる技術系商社も現れており、インフラ関連絡みにも商社の目が向けられている。
一方、システム提案が加速していることから、商社側が制御機器メーカー以外にも関連するメーカーと協業やコラボレーションを推進するケースが増えており、取引するメーカーの業種・業態の幅がより一層拡大している。