1、現状
日用品産業は、日常生活で使用される身の回りの様々な製品を製造、供給する産業であり、家具、文具、ガス石油機器、キッチン、宝石、楽器、オフィス家具、衛生陶器、スポーツ用品、玩具など多岐にわたる。
日用品産業は、一般に中小企業の比率が高いこと、また、木製家具、陶磁器などに見られるように、地場産業として地域経済において重要な位置付けにあるものもみられることなどが特徴である。
日用品産業は、近年における内需の低迷やライフスタイル・消費者の購買意識の変化に加え、中国などからの安価な輸入品の増大などにより、出荷額は多くの業種において減少傾向にある。日用品産業の中には、安価な輸入品に対抗し、競争力を確保するために、人件費が安い中国などアジア諸国への工場進出や委託生産などを行う企業もある。また、現地生産・現地販売を行うために、販売先の国に生産拠点を作る企業もある。なお、玩具産業においては、これまで中国での生産が大半を占めていたが、現地労働者の労働コストの上昇等を背景として、中国からベトナム等、他のアジア諸国に生産拠点を移す企業も出てきている。
また、昨今の原油や原材料価格の乱高下、米国に端を発した世界金融危機に伴う個人消費の低下によって、多くの企業が設備投資の縮小、採用抑制といった雇用情勢の悪化等大きな影響を受けている。
2、我が国産業の強みと弱み
(1)強み
我が国日用品産業は、消費者ニーズを迅速かつ的確につかみ、技術開発及び多品種化を行っている分野においては強みを有している。例えば、文具については、多機能やアイデアのある製品が消費者の購買意欲を高めている。また、日本のライフスタイルに基づくエコで快適な製品で、海外市場の販路拡大に積極的な業種も、海外の市場で強みを発揮しつつある。例えば、衛生陶器では、国内での販路開拓だけでなく、安全・快適な便器として、海外の高級ホテル等へ設置され、節水性能、洗浄性能等が評価され、海外の一般家庭への普及を図っている。
(2)弱み
木製家具、陶磁器、金属洋食器などは地場産業として地域の重要な産業であると同時に、雇用の担い手でもある企業が多いが、技術面での差別化の余地が小さい。デザイン面などで十分な特色を有していないなど製品の差別化ができていないところも多い。
3、我が国産業から見た市場の展望
日用品産業の多くは、日本人のライフスタイルの変化や規制、他の産業の動向によって、その需要及び市場の展望が大きく左右される。例えば世界的な金融危機を発端とした不況の影響や、これに伴う住宅着工件数の減少により、タイル、衛生陶器及び給湯機器等は厳しい状況が続いている。また、金属洋食器や陶磁器などについては、安価なアジア製品の流入や、製品の差別化が難しい等の要因により、総じて地場産業にとっては厳しい状況が続いている。
4、我が国産業の展望と課題
(1)今後の競争力強化に向けた対応
日用品産業にとっては、使いやすく機能性が高いだけでなく、良質なデザインを併せ持つ製品開発を行うことが、輸入品との差別化を図り、ひいては海外展開するための重要な鍵となっている。
一方、日用品産業は海外からの模倣品被害にあいやすく、その対策については、企業の努力だけでは限界があるため、引き続き、官民を挙げての取り組みが必要である。
(2)グローバル展開
我が国の日用品産業は、「安全・安心」、かつ、エコで快適な製品を提供することがグローバル展開においては大きな強みである。我が国製品のブランド力を更に強化するため、こうした日本製品の強みを維持するとともに、各国の市場ニーズに柔軟に対応した製品開発力や、日本製品の質の高さを対外的に発信することが重要である。また、輸出相手国における認証制度構築支援・標準化等を通じ、製品需要を拡大することが有効と考えられる。また、国内での市場が飽和・縮小傾向にある業種を中心に、海外に販路拡大することで活路を見出す企業も現れている。特に、製品の高付加価値化を達成するため、洗練された市場である、欧米への進出を目指し、著名な展示会への出展を販路拡大のきっかけとする企業が増えている。
さらに、欧米市場でブランド力が強化された企業や、これまで情報等の不足からアジア進出に慎重であった企業が、成長著しい中国をはじめとしたアジア市場進出を目指す動きが活発化している。