三菱電機は、工場の生産設備や産業機械などを制御する産業用コントローラーの更新・統合時に、制御ソフトウェア資産を継承できるコントローラー基盤技術を開発した。これによって最新のハードウェア性能を活かしながら、既存ソフトウェアも継承でき、制御ソフトウェア資産の有効活用に繋がる。産業用コントローラーだけでなく、エレベータや鉄道などの社会インフラ機器にも応用が見込める。今後、用途開拓を目指して1~2年で実用化を図る計画だ。
産業用コントローラーに市販の組み込みボードを活用した場合、組み込みボードの世代交代が早いことから、設備メーカーは数年おきに新たなコントローラーを開発している。また、これらのコントローラーに組み込む制御ソフトウェアは、リアルタイムOS上で動作するように開発されているが、新たなコントローラーで採用されるリアルタイムOSの種類やバージョンが以前と異なる場合には、制御ソフトウェアをOSに合わせて再開発する必要も出てくる。
同社では、情報システムの分野で新旧混在する複数のサーバーアプリケーションを1つのサーバーに集約する仮想化(VM=バーチャル・マシン)技術を産業用コントローラーに適用、1つの共通コントローラー上で複数の制御ソフトウェアを実行できるI/Oパススルー技術を搭載した組み込みリアルタイムVMを開発した。これにより、複数のリアルタイムOSを1つのコントローラー上で10マイクロ秒以下の速さで実行でき、各リアルタイムOS上で動作する制御ソフトウェアのリアルタイム動作を保証している。
また従来、制御コントローラー間のリアルタイム通信は、ネットワークやバスなどを介して行われており、例えば、8000バイトのデータ転送を行おうとすると、数百マイクロ秒から数ミリ秒オーダーの時間が必要であるが、組み込みリアルタイムVM上には、データ通信をリアルタイムに実行する仕組みも備えており、ソフトウェア上の仮想的なバスを介して行うことで、100マイクロ秒以下と従来比最大約10倍の高速転送が実現できる。産業用のコントローラーではハードウェアは新しい製品を使いたいが、ソフトウェアは既存のものをそのまま使い続けたいというニーズが多い。また、複数の制御ソフトウェアを1つのコントローラーに統合し、ハードウェアコストを削減する方法もあるが、ソフトウェア間のリアルタイム性確保などで開発に難しさが伴う。
今回の開発は課題解決に繋がる技術で、同社では今後の産業用コントローラーへの適用を目指していく。