3月11日、東北、信越を震源として発生した「東北地方太平洋沖地震」は、東日本地域に甚大な人的、物的被害をもたらし、その影響はあらゆる方面に及ぼうとしている。制御機器業界では、専業メーカーを中心に東北地方に工場を有している会社が多い。また、商社やメーカーの営業所も立地が目立つ。オートメレビューでは、地震に伴う14日現在の制御機器関連会社の対応状況などをまとめた。
制御機器関係での地震の影響は、物的、人的被害は比較的少なく、むしろ停電に伴い生産設備などが稼働できないことや、通信、交通手段が遮断されて、受・発注情報や物流などがストップしているところが多い。
関東地区の会社では、岩手県奥州市に岩手工場があるサンミューロンは、物的、人的被害はなかったものの、物流や部品入手状況確認のため、受注・生産・出荷業務をすべて停止している。業務再開の見込みも、14日現在立っていない。
福島県白河市に白河工場があるネミコンは、工場の直接被害はないものの、道路など物流面の復旧が遅れていることから、正常な操業ができない状況となっている。
ワールドは宮城県登米市に登米事業所があるが、建物及び従業員は無事。ただ、電気、通信、道路などのライフラインが普通であることから、製品出荷、部品受け入れなどができない状態で、生産がストップしている。
ジェルシステムは福島県の白河工場が復旧作業に入っている。従業員も全員無事である。水は止まっているが、電気は通電している。生産を再開しても物流が止まって出荷できないため、販売先に迷惑をかけないよう納期などの連絡をしている。
かわでんは、山形工場の損壊はなく操業を行っている。北海道・東北支社も全員と連絡が取れた。ただ、燃料は救急車など災害救助を最優先にしているので、道路事情もあるが燃料不足が及ぼす影響を考慮して対策を立てる。九州工場に生産を一部移すことも考える。
仙台市若林区に本社がある商社のエフ・エー・アネックスは、駅に近い方で津波に襲われずに済んだ。社員も全員無事で、14日は取引先の状況把握に努めているが、気仙沼など被害の大きな地域とは連絡がまだとれず、非常に心配している状況。また、運送会社が配達しておらず、受注しても納期が対応できない。
中部甲信の会社では、多摩川精機が、青森県の八戸事業所、福地第一工場・第二工場、三沢工場では建物の崩壊はなく、設備も損傷は少ない。全従業員の無事も確認。ただ、従業員の中には岩手、宮城県に実家があり、そちらの方は連絡が取れていない。13日から通電を再開したので、現在、設備、ラインを点検している。生産再開に向け取り組んでいるが、物流対策の問題もあり本社で対応できるよう準備している。販売先の中には大被害を受けたところもあり心配している。
東洋技研は、仙台営業所の従業員4人の無事を確認。仕事ができる状態ではなく、当分は業務の再開が無理で、本社が営業の窓口を肩代わりしている。新潟営業所は営業活動でき、取引先との連絡に全力を挙げている。また、運送会社が集配を停止しており、その影響を懸念している。
共立継器は、本社工場、千曲工場とも影響は受けなかった。仙台営業所は3人全員が無事である。営業所は機材が倒れた程度で済んだ。連絡のつかない取引先が多いので心配である。品物をまだ届けないで欲しいとの連絡もあった。これからは、物流対策が問題になる。
日東工業の関係会社の東北日東工業(岩手県花巻市)は、分電盤を生産しているが、地震により工場設備が被災し、塗装設備などの損害状況を調査中。建物にひび等が入っているという。復旧には1カ月程度はかかる見込みで、今後の物流、生産体制をどうするか検討している。
日東工業栃木野木工場(栃木県野木町)では、システムラックを生産しているが、地震の影響を少し受けて、現在塗装設備などを点検している。こちらは、3~5日程度で生産再開できる見通し。
また、日東工業仙台営業所(仙台市青葉区)は、建物にひびが入っているという。岩手営業所(岩手県花巻市)、青森営業所(青森市)はそれほど大きな影響は受けていないが、関東方面も含めて物流が滞っているので、今後の配送体制について検討している。
河村電器産業東北支店(仙台市宮城野区)は、建物のタイルなどにひびが入っているが、人的被害はなく、従業員も一部出社している。事務所内の片付けに時間がかかる見込み。メールなどで事務所との連絡は取れるという。代理店も被害を受けたところが多く、物流も麻痺しているため、営業再開は未定。
青森営業所(青森市)、盛岡駐在所(盛岡市)、山形営業所(山形市)、郡山営業所(福島県郡山市)などはそれほど大きな被害を受けていないが、山形より北に配送できない状況になっている。
パナソニック電工SUNXは、東北営業所(仙台市泉区)の被災状況を調査中。電話が繋がりにくい状況にあるが、従業員の人的被害はないという。物流体制についても調査している。
名古屋市内の商社は、地震の直接的な被害はないが、発注の品物が来ない。仮設住宅などの物流が優先されるので、中部地区でも物流など間接的な影響が続く。
関西地区のメーカー、商社の状況は、各社とも情報を収集・把握している段階であるが、現時点で大きな被害はでていない模様である。また、商社では取引メーカーの工場の稼働状況や出荷状況、物流の状況など、情報の収集・把握に努めている段階で、情報が集まり次第、検討策に入るとしている。
関西に本社を置くメーカー、商社で、オムロンは生産拠点が東北・関東地方になく、営業拠点、三島営業所も14日現在、情報を確認中である。従業員は全員無事の模様。
IDECは、事業所(工場)は筑波(茨城県龍ヶ崎市)、営業所は東北・北海道地区では、札幌(札幌市)、仙台(宮城県仙台市)、郡山(福島県郡山市)があるが、現在情報を確認中である。
パナソニック電工は14日現在、生産設備、物流の状況など情報を収集している段階。郡山工場(福島県郡山市)に軽傷者が数名出ている模様。
デジタルは仙台に営業所があるが従業員は全員無事の模様。14日現在、情報を収集中。
商社の因幡電機産業は14日現在、詳細は把握しきれていない。情報を収集してから具体的な対応策について協議するとしている。
日本電気制御機器工業会(NECA)でも会員会社の情報収集に努めている。工業会としての対応もいまのところ未定。
電気制御機器の東北地区での2010年度出荷額は約270億円と推定され、全体出荷額(4555億円)の約6%を占めている。今回震災の及ぼす影響が今後心配される。