機械安全対策機器を取り付けることで、生産現場で作業中に事故の危険性が生じるたびに作業が中断すると生産効率が下がるとして、多少の危険性があっても機械を止めないで作業を行えるように安全機器を外したり、無効にしたりすることが良く行われている。安全思想で先進している欧州では、安全性と生産性を両立させるための例として、ライトカーテンを使った安全システムで、人が通った時は機械が停止し、ワークが通った時は安全機能が働かないミューティング技法によって、無駄な生産ラインの停止を防ぐ安全対策を行っている。このようなリスクアセスメントをきちんと行うことで、頻繁に機械や作業が中断することがなくなり、生産性の向上という課題解決にもなってくる。
製造現場の危険には、さまざまなものがある。切断や押しつぶしといった機械的なもの、高温や低温などの熱によるもの、感電や漏電といった電気的なもの、騒音や振動、放射線、化学薬品、不自然な作業姿勢など、危険を生み出す可能性は多岐にわたる。
これらの危険に対して、当面の安全を確保したいというニーズでは機械的、電気的な安全対策が多い。
主な安全対策機器としては、安全リレー、安全リレーユニット、セフティドアスイッチ、セフティリミットスイッチ、非常停止用スイッチ、ソレノイド付き安全スイッチ、エリアセンサー/ラインセンサー、マットスイッチ、テープスイッチ、ロープスイッチ、フットスイッチ、プログラマブル安全コントローラ、安全プラグ、安全確認型回転停止センサー、非通電電流センサーなどがある。これら各種安全対策機器を用途に合わせて、機械本体や機械周辺に装備して安全を確保する。
製造現場などで最も多い事故は機械から派生するもので、それを防ぐには人間の作業空間と機械の作業空間を完全に分離するか、人間が作業を行う時には機械が停止する、機械が作業を行う時には人間が作業を行わないことが必要である。この機械災害を防止する基本的な方法としては、ガードによる安全防御と安全装置による安全防御がある。ガードは、機械と人間の作業空間を構造的に分離するもので、構造によってケーシング、覆い、スクリーン、扉、包囲ガードとも呼ばれる。
安全装置は、機械設備に適切なガードを備えても、現実的にガード内部に作業者が立ち入る必要が出てきた時に求められる。段取り、調整などの作業の場合、機械の作業空間と人間の作業空間とが重なり危険領域となる。危険領域では、人間と機械の運転出力のどちらかを停止・安全状態にする必要がある。
工場内での通信のネットワーク化が進む中で、セーフティのネットワーク化も進んでいる。従来、安全回路と制御回路を分離したネットワークが行われていたが、イーサネットの導入が製造現場でも志向される中で、一体のネットワークとして構築する方向になってきている。
一方、日本電気制御機器工業会(NECA)や日本認証(JC)などが中心となって展開している「セーフティアセッサ認定制度」も、機械類の安全性を高める設計や安全技術普及に貢献している。すでに約300社、約2000人のセーフティアセッサが誕生している。10年度からは新たに「セーフティベーシックアセッサ(SBA)資格」をスタートさせた。SBAは、製造現場の安全確保の観点をさらに広げ製造職・管理職・管理業務職・営業職など非技術系職種で、機械運用安全の知識を有する人材育成を狙いとしている。
対象も国内に留まらず、海外、とりわけアジアに製造拠点を展開している日本企業を中心とした製造業の従業員・管理職にも広げる方針でグローバルな運用を目指している。
設備投資の回復が進む中で、安全対策投資も増加傾向を見せている。ローコストな安全対策ニーズに対応して、機器メーカーの製品開発努力も進んでいる。同時に海外での生産が増える中で新興国での安全対策も重要性が高まっていることから、市場開拓へ期待が集まりつつある。