鉄、銅、金、銀など素材価格の高騰が、駆動・制御機器各社を圧迫し始めている。特に、鉄、銅を主材料とするモータ、トランス、ソレノイド、開閉器などは製造原価が5~10%前後押し上げられているため採算割れの可能性も出てきており、各社は価格改定の検討を始めた。原油の急激な値上がりで樹脂価格も過去を上回っており、制御機器も価格引き上げに踏み込まざるを得ない状況になってきた。
駆動・制御機器各社は2007年から08年にかけて10~15%の値上げを実施している。原材料に占める銅、鉄の使用量が大きい変圧器、モータがまず価格改定し、次いで制御機器も行っている。その後、09年初から素材が値下がりしたのに伴い、各社は定価引き下げや実勢価格引き下げを行っている。
各社は製造コスト削減に取り組み、部材の海外調達にも乗り出している。
こうした原価引き下げ努力も、素材高騰で帳消しになっている。金、銀、銅、鉄、樹脂の価格急騰は、製造合理化によるコスト削減分を上回っている。
原材料費用が売り上げの半分を占める電源トランスは銅、鉄の価格変動が採算に直結する。このところの電磁鋼板などの値上げにより、製造原価が8%程度引き上げられている。
ある会社では「トランスは品質保証のため顧客の指定容量を10%上回る製品を造ってきた。指定容量が15%少ない製品なら材料の使用量が減り採算が合うが、顧客の信用を失い、結果的に損をする」とし、価格改定を望んでいる。
売り上げに占める材料費が40%のソレノイドも、銅、鉄が原材料のほとんどを占める。モータ、電磁開閉器も同様である。
「中国で標準品を生産しているが、同地でも素材が値上がりしている」と、中国で調達しても採算性が厳しくなっている。
各社は素材価格の先行き動向に注視しているが、値下がりは期待できそうにない。
岐阜県の電磁鋼板、珪素鋼板加工メーカーは本紙記者に先行き値下げに対して悲観的な見方を打ち明ける。「当社のコアはモータ、変圧器に採用されているが、原材料の値上がりもさることながら、電磁鋼板の需要が供給を上回っている。今まで使われていなかった分野で使われるようになった。例えば、自動車にモータが大量に使用されるようになり、当社製品も急増。値上がりは今後も続く気がする」という。
素材の値上がりは、駆動・制御機器全般の価格改定につながりそうである。