近年、電子機器の高密度実装に伴い発熱による装置の故障が増えており、熱対策が非常に重要になっている。そこで、盤用熱関連機器工業会がQ&A形式でまとめた熱対策機器の注意事項を紹介してみた。
『設置』
Q1.熱対策機器を設置するときの注意事項は?
A1.(1)熱対策機器をキャビネットに設置する場所は、周囲の壁、その他障害物等より200~300mm離してください。
キャビネット内側の内部機器からも、同様に離してください。距離が近いと空気循環が悪くなり、冷却能力が低下します。
(2)ファン、フィルタ、端子などのメンテナンスができる位置に設置してください。
(3)設置の際には、空気循環がショートサーキットしないように、取付け場所や仕切板の設置等ご配慮ください。ショートサーキットしていると、十分な冷却能力が得られません。
ショートサーキットとは、通風を妨げる障害物等により、熱対策機器の吹出口から出た風がそのまま吸気口に吸込まれる現象をいいます。これにより、盤外側では吸気温度が上昇したり、盤内側では吹出口からでた冷風が盤内全体を循環できず、結果として十分な冷却能力が得られなくなります。
(4)盤用クーラは、密閉型のキャビネットに設置してください。換気口や電線引込口が開いているような密閉性の悪いキャビネットで運転を続けますと、冷却能力の低下や結露によるトラブルとなります。
(5)盤用クーラの天井取付け型は水平に、側面取付け型は垂直に取付けてください。水平、垂直が保たれないと、キャビネット内への漏水原因、及びコンプレッサの寿命低下と故障原因になります。
『環境』
Q1.使用環境に関する注意事項はありますか?
A1.引火性ガス、腐食性ガスのある雰囲気、振動・衝撃が加わる場所などで使用すると、製品の寿命低下、故障の原因になります。ただし、使用される製品によって仕様が異なりますので詳細は別途、製品仕様書等をご確認願います。
『施工』Q1.熱対策機器を取付け施工する際の注意事項は?
A1.(1)取付け寸法に従った穴加工をしてください。開口寸法が小さいと冷却能力の低下や結露によるトラブルとなります。
(2)熱対策機器の取付け時は、パッキン面が均一に密着できるように、固定してください。
(3)オイルミストや水滴が多い環境において、熱対策機器の取付け面には必要に応じてコーキング処理を施してください。キャビネットの板厚が薄く取付け面が歪む場合にはキャビネットの補強を施してください。
また、取付けネジ部より水分等が浸入する恐れがある場合は、取付けネジやボルト周囲をシール材でコーキングして防水処理を完全に行ってください。キャビネットの密閉度が悪いと、外気の粉塵や水分等が浸入することにより故障発生の原因になります。
(4)湿度が高い雰囲気で使用されている場合は、キャビネットの密閉度を上げてください。またクーラの冷気による結露防止として、できる限り設定温度を高くしたり、冷風吹出し口からの距離を離したり、断熱材を貼るなどの処置を施してください。
Q2.盤用クーラのドレンホース施工に関する注意事項は?
A2.ドレンホースは盤用クーラのドレンパイプから抜けないよう確実に固定してください。また、正しく取付けされていないとドレン水が排出されず、キャビネット内部への水漏れの原因となります。
2本のドレンパイプを備えた盤用クーラでは、それぞれのドレンホースを1本にまとめず、個々に排水できるよう施工してください。
『メンテナンス』
Q1.熱対策機器のメンテナンスは必要ですか?
A1.熱対策機器は、日常点検や定期点検でメンテナンスが必要となります。
日常点検においては、フィルタの状態(フィルタ使用の製品に限る)を確認し、汚れが目立つ場合は清掃を行ってください。
定期点検においては、ファンモータの異音発生や停止、熱交換フィンの目詰まり、ドレンパイプの目詰まり(盤用クーラに限る)等が発生していないか確認し、必要に応じて修理(交換)や清掃を行ってください。メンテナンスを行わないと冷却能力の低下や故障の原因となります。
(資料提供:盤用熱関連機器工業会技術資料)