東日本大震災から1カ月が経過したが、半導体、コンデンサー、電線、コネクタなどの工場で大きな被害が出ており、FA・制御機器、電子部品などへの影響が出始めている。これらのメーカーは当面在庫品で生産を継続しているが、カスタム半導体などは7月頃まで生産再開が難しいと言われており、各方面に大きな波紋を与えそうだ。
震災のあった3月の売り上げは、メーカー、商社とも大きな影響は出ておらず、ほぼ計画通りに推移したところが多い。しかし、日が経つにつれ予想以上に被害が大きいことが判明、加えて4月7日の余震で再び生産がストップした工場も多い。
東北地方は制御機器の工場は比較的少ないものの、電子部品メーカーやその協力工場が多い。当初はFA・制御機器の流通には、物流インフラが回復すれば元に戻るという楽観的な見方もあったが、実態が明らかになるにつれ、影響が出始めている。
半導体のルネサスエレクトロニクスの生産停止は、自動車の生産に影響を与えているが、制御機器でもPLC(プログラマブル・コントローラ)やインバーターなどの生産への影響が懸念されている。
サプライチェーンで在庫を圧縮していることに加え、カスタム半導体のため、他社からの購買もできず、生産再開を待たざるをえないのが実状。
また、世界シェア25%と言われるアルミ電解コンデンサーメーカーの日本ケミコンも主力工場が被災したことで、電源やPLC、インバーターなどのFA・制御機器から家電まで大きな影響を与えている。
電源関係の生産が滞ることでFA制御機器だけでなく、今後電力不足への対応として引き合いが急増しているUPS(無停電電源装置)や発電機などの生産にも影響が及ぶ。
そのほか、電線、コネクタなども、メーカーの工場被災やインフラ復興を進めるために東北地方に優先的に流通させていることもあり、手に入りづらい状況が続いている。特に日立電線が製造しているようなUL規格品など特殊仕様のものが入手困難な状況にある。
震災の影響がない外資系メーカーでは「4月の受注は通常月の3倍のペース」と話すところもある。
こうした中で、手に入らない部品などの代替え品を探す動きも強まっている。汎用部品で代用できれば完成品として納入できると検討しているもので、社内の品質基準に基づき試験を進めているところも多い。
商社の中にもこれを機に海外部品を採用してもらえる可能性が生まれるとして、販売提案を強めている。
福島第一原子力発電所の放射線漏れ事故による風評被害の問題もある。ある商社によると、得意先から「海外に輸出する物件だが、放射線の汚染は大丈夫か」と質問され、確認を要求されている。細かい部品まで確認を要求される状況で、今後、放射線のデータを付与しないと売れないかもしれないと指摘している。
今後の見通しは4月末までにはっきりするものと見られるが、現状では第1四半期の売り上げは大きく落ち込むことが予想される。
これらの部品メーカーの生産が早く立ちあがれば、第2四半期以降に復興需要として落ち込みをカバーできる状況も見込めるが、一気に需要に見合う供給は難しい側面が多く、しばらくは限られた在庫でしのぐことになりそうだ。